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2009-02-02 00:00
小沢の「本会議トラウマ」は深刻だ!
杉浦正章
政治評論家
ここまで来ると、明らかに政治手法と言うより、本会議場へのトラウマとしか考えられない。民主党代表・小沢一郎の「本会議嫌い」を分析すると、そうとしか考えられない。朝日新聞と毎日新聞が、さすがにこらえきれなくなったか、社説で「小沢一郎政権」に疑問を呈するに至った。小沢が田中真紀子に下品きわまりない「2番手質問代行」をさせたことと併せて考えると、「民主党政権」の議会制民主主義軽視の姿すら浮かび上がる。
1月31日の社説で朝日は「民主党は本気で政権を担う覚悟があるのか。そう疑いたくなるような議場の光景だった」と、小沢の代表質問回避と田中の質問を叩いている。「表舞台の国会論戦になぜこんなにも及び腰なのか」と代表質問から逃げまくる小沢を批判し、「これで総選挙で民主党が勝ち、小沢氏が首相になれば、国会答弁や外交交渉は本当に大丈夫なのか。政策をつくり、実行していくためにも、政治指導者の発信力が大事な時代だ」と、“小沢政権”の行く末を案じている。そして「小沢代表の支持が高まっているのは、麻生自民党のふがいなさという敵失によるところが大きい」とまで言いきっている。毎日に至っては、もっときつい表現だ。「なぜ登壇しなかったのか、ということだ。これでは『やはり、小沢氏は本当は首相にはなりたくないのでは』との声が、再び大きくなり、小沢氏をトップとする政権構想にも疑問符が付くことになる」とまで断じている。
両社説とも1月29日に、首相・麻生太郎の施政方針演説を「信なき人の言葉の弱さ」(朝日)「麻生シナリオがうつろに響く」(毎日)と最大限の表現で批判を展開したばかりである。それが打って変わって、小沢批判に転じたのだ。社説の指摘を待つまでもなく、「敵失論」も「本当は首相にはなりたくない論」も筆者がかねてから度々本欄で指摘してきたところで、ようやく論説レベルでも小沢の本質が分かって来たようだ。解散総選挙を前にして、普通の野党党首なら絶好の機会とばかりに磨きを掛けた弁舌を展開するのが常だ。それをあえて回避するのは、政治的思惑や信条に根ざしたものではあるまい。心臓病で昼食後の本会議出席や演説を医者から止められていることを直接的原因とするトラウマがある、としか考えられない。常に爆弾を抱えているような心理状態に置かれているのだろう。
ということは、朝日の指摘するように「小沢首相」になった後も、「国会答弁や外交交渉は本当に大丈夫なのか」ということになる。筆者は「大丈夫ではない」とみる。本会議はもちろんのこと、一日中貼り付けになる予算委員会答弁は、恐らく小沢には耐え切れまい。常日頃観察していて、小沢ほど挑発に乗りやすい政治家も少ない。記者会見でも不本意な質問には、すぐに感情的になって怒り出す。その小沢が「野党」自民党から急所を度々突かれたらどのような反応をするだろうか。感情的な過剰反応で国会が紛糾する可能性や、すぐに政権を投げ出すことも予想される。それを一番知っているのも小沢だ。したがって、たとえ民主党が総選挙で過半数を獲得した場合でも、小沢があえて火中の栗を拾って、首相になるかどうか、大きな疑問が残る。
田中を質問者に起用したのも、小沢の誤判断だ。朝日は「民主党が二番手の質問者に田中真紀子氏を立てたことにも異議がある」と、異例の批判を展開した。評論家・岩見隆夫もTBSテレビで「真紀子が出て来て、品のない質問をして、民主党は損をした」と批判しているが、その通りだ。父親田中角栄は、小学校しか卒業していないが、苦労人らしい品性があった。真紀子の質問は、昔の長屋のおかみさんが井戸端会議で大声で騒いでいるような内容と雰囲気だった。首相に「漢字テスト」をした民主党副代表・石井一の品のなさと双璧だ。聞くに堪えない下品さだった。草葉の陰で父親が泣いているだろう。
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