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2009-02-11 00:00
(連載)中国の海洋戦略は政治的思惑先行?(2)
山田 禎介
ジャーナリスト
アメリカはこれまで日本領海侵犯など、原潜を含む国籍不明潜水艦の活動ぶりを逐次、日本に伝えてきた。この国籍不明の原潜は中国、ロシアのものでしかない。日本ではその情報のたびに脅威論が浮上する。一方、空母部隊を捕捉する攻撃型原潜や、長距離ミサイル搭載原潜はアメリカには多大な脅威。同様の軍事脅威論が1980年代、当時のソ連に対してあり、国防総省報告書「ソ連の軍事力」でソ連軍、とりわけ海軍力拡大の懸念を日本など周辺同盟国に警告し続けた。ご丁寧なことに全訳日本語版が、マスコミ界にも送付されたほどだった。
ところで現代中国の艦船は、作戦行動を探知されやすく、運用・展開するには不利なことが、米軍当局者の発言でも指摘されている。かつてアメリカ太平洋軍の高官はインタビューで、「南、東シナ海に面する中国沿岸部は浅い大陸棚であり、中国艦船の航行は上空からお見通し。どの中国艦の活動か、艦名まで分かる」と指摘した。軍事衛星ではさらに大陸棚の海中の潜水艦も“お見通し”であろうことは想像に難くない。2006年11月、当時のファロン米太平洋軍司令官が、太平洋上で演習中の米空母に中国潜水艦が魚雷やミサイルの射程内距離まで接近する事件があったと語り、懸念を示した。しかしこの潜水艦接近事件は、実はアメリカが中国潜水艦の接近をモニターしていたことの方が重要。ファロン発言はこの空母キティホークへの教訓であり、アメリカ海軍作戦部から太平洋艦隊司令部へと、中国潜水艦の行動情報は伝えられていたのだ。
08年3月に明らかになったキーティング太平洋軍司令官の上米院公聴会証言も意味深長だ。同司令官は07年訪中の際、中国海軍高官から「将来の空母展開と太平洋2分割論」構想を明らかされたと語った。さらに会見でのキーティング発言がメディアに大きく踊った。だがその語り口には危機感はなく、余裕すら感じさせるものだった。さらにキーティング司令官は「空母の運用は見た目ほど簡単ではない」とクギを刺すことも忘れなかった。
中国側の意図的ともとれる空母建造情報はともかく、もたらされる中国軍事情報でも、原潜などの建造、活動については極めて少ない。昨年9月にはアメリカ原子力空母「ジョージ・ワシントン」が母港化後の横須賀に初入港し、翌月には巡航ミサイル原潜「オハイオ」が目立つことなく初寄港した。海軍特殊部隊も搭乗可能という原潜「オハイオ」について、アメリカ海軍は「活動は一切公表できない」とし、ほどなく作戦行動に横須賀基地を後にした。初の巡航ミサイル原潜の出現、これも気になる動きだ。
中国は2008年国防白書で「現在も将来も永遠に覇権を唱えず、軍事拡張をしない、核先制攻撃をせず防衛的な核戦略を実施する」としているようだが、アメリカの原子力空母、原潜という水上・航空と水中にまたがる強大な戦力の前に、技術的にも運用・展開面でも劣る存在となろう空母建造と展開を本気で考えているのだろうか。アメリカもまた、アジア太平洋地域の真の軍事的脅威は、中国の空母ではなく、原潜を主力にした潜水艦群の展開の方だとみているのではないだろうか。(おわり)
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