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2009-02-26 00:00
麻生首相のサハリン訪問を懸念する
山田 禎介
ジャーナリスト
めまぐるしい内外政治の動きのなかで、かねての懸念が表に出てきた。それは2月18日の天然ガス・石油開発事業「サハリン2」の生産開始祝賀式への麻生首相の日帰り訪問だ。ロシアのメドベージェフ大統領が、このいわくつき事業のセレモニーに麻生首相を招待したものだった。だが日本の政治リーダーのサハリン訪問は、またしても北方領土問題、対ロシア関係における稚拙な行動の積み重ねとなった。ここまではマスコミも報じていることだが、私はさらなる危惧をもつ。日本エネルギー業界はサハリンからの液化天然ガスの供給を、新たなエネルギー・ルートの確保だとみて、「サハリン2、待望の稼動」と、ロシアからの安定調達に期待を込めている。果たしてそんな甘い見方でよいのだろうか。
「日本至近で、都合がよい」と、サハリン2への依存が強まれば強まるほどに、ロシアの意のままになりかねない。ロシアの石油・天然ガス供給という経済・政治戦略は、古くて新しい話だ。ロシアからウクライナ経由の欧州向け天然ガス供給は、欧州大陸をいまも揺さぶり続ける。その懸念に対し「冷戦時代のソ連ですら仇敵西ドイツにも安定供給した」と評価する向きもある。だがソ連は、東ドイツなどの東欧圏諸国に石油・天然ガスを供給していたから、西ドイツにはその“おすそ分け”しただけにすぎない。島国の日本は、リスクをともなうエネルギー資源の調達に当たっては、多くの海外諸国に目を向け、リスクの分散をはからなければならないはず。これは近年の穀物調達など食糧戦略と軌を一にするものだ。
麻生首相はオバマ大統領とのワシントンでの会談も控え、都合よく米ロ首脳と渡り合える実績になるとでも考えたのだろうか。サハリンは国際法上、ロシア領土と確定されたものではない。そこに出かけた首相の行動様式にもつながる外交・歴史認識のセンスは、最近も前例がある。森政権時代の沖縄サミット(2000年)への中国首脳招請問題を思い起こすのだ。このときホスト国の日本は重ねて中国を招請したが、反応はなく、黙殺された。少しでも中国の歴史と行動を勉強した人ならば、それがなにを意味するものか、分かるはずだ。中国が琉球と呼ばれた地域に対し、歴史的、文化的な面である種の“宗主権”を依然、意識していることがこの黙殺という答えの背後にある。中国首脳の沖縄訪問はありえない。またブラックユーモア風になるが、仮に韓国が「自国領の独島」と主張する日本海の「竹島」に、日本の首脳を招待するといったら、果たして出かけるような首相がいるだろうか。
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