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2009-03-02 00:00
北朝鮮が核と弾道ミサイルで恫喝した場合の対処を考える
宮脇 磊介
初代内閣広報官・宮脇磊介事務所代表
現在の日本が置かれている安全保障環境のもとで、日本に対する最も直接的な軍事的脅威は、北朝鮮の弾道ミサイルである。それへの対処こそが、現下の日本の安全保障政策の最優先課題だと言える。核弾頭搭載の弾道ミサイル(信頼性の劣る「粗雑な核弾頭」を含む)に至るまでには、まだ若干の時間的余裕があるにしても、日本としては、近い将来に起こりうる事態および現に進行している事態に対する、自国としての体制整備と関係諸国への理解と協力関係の促進などの外交努力は、喫緊の重要課題である。北朝鮮がミサイルや特殊工作部隊で日本に「実害」を与えたならば、基本的には日米安保体制の原則に基づき、「矛」役が米国、「盾」役は日本ということで対処することになる。
同時並行して、自衛隊は、北の発進基地に対する「拒否作戦(denial operation)」を行なわねばならない。これは国会で大きい問題にならないと考えられる。「拒否作戦」とは、このケースにおいては、まずは飛来する敵ミサイルを弾道ミサイル防衛システム(BMDS)で迎撃することであるが、さらに必要であれば、相手の第二撃を拒否するために航空自衛隊のF-2と海上自衛隊の艦艇からの巡航ミサイル(CM)が北朝鮮のミサイル発射装置を空爆することになる。または、海上自衛隊の潜水艦で陸上自衛隊の特殊作戦群を上陸させ、ミサイル基地や発進する埠頭、施設等の爆破を行なうことになる。なお、現在の憲法解釈では、都市や人口に対する報復は、法的に行えないことになっている。都市に対する報復や非軍事施設に対する攻撃は、必要限度を超える攻撃であると見なされるためである。なお、これらの戦力は、保有すること自体が、抑止力としての機能を発揮するものと期待できる。
北朝鮮が核を実戦配備し、日本を核で恫喝した場合、日本において「核保有すべき」との声が出るのは当然である。もし、北朝鮮の核による「実害」が発生することともなれば、日本国内における「核保有論」(日本が独自に核兵器を開発し、保有すべきであるとの主張)を抑えることは難しくなるであろう。国民の支持が多数となれば、日本が物理的に核弾頭を持つのは、時間の問題となるであろう。日本が本気で核武装することを決めれば、米国は、日米同盟下における共同作戦システム上の必要を理由に、自国のシステムを売りつけようとしてくると思われる。また、FX売り込み競争と同様、フランスなどから購入する可能性も考慮されるであろう。
「結果的に北朝鮮の核よりも、核を持った日本の方が、北東アジアの不安定要因となる」とする見解も、国内外にわたってあるであろう。しかし「日本が核を持つとすれば、脆弱性が低く、安定性の高いシステムを構築し、そのような運用をすべきであり、そうであれば、日本の核は必ずしも不安定要因にはならない」とする考え方も成立の余地がある。「日本が核を持つと、自動的にアジアや世界が不安定化する」という考え方は、そもそもにおいて、日本に対する過剰な不信感に根ざした見解であると言わざるを得ない。ただし、現在の日本の安全保障関係者や政治指導者の殆どは、日本の核保有について強く否定的である。また、中国からも「日本の核保有は、中国の国益を損ね、認められない」とされるであろう。しかし、あくまでも「理論的な可能性」として言えば、「安定的な核抑止体制ができれば、それは中国にとっても利益になる」はずである。
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