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2009-03-05 00:00
北朝鮮長距離弾道ミサイル:発射か中止か
角田 勝彦
団体役員・元大使
宮脇磊介氏の3月2日付け投稿「北朝鮮が核と弾道ミサイルで恫喝した場合の対処を考える」(第940号)を興味深く拝見した。しかし、「拒否作戦(denial operation)」や「核保有論」は、まだ早いのではないだろうか。今回、北朝鮮が長距離弾道ミサイルを発射する場合には、米国が本腰を入れて脅威に対処することから、むしろ軍事的な事態は好転するのではないだろうか。北朝鮮が発射を中止するのなら、まさに6ヶ国協議の出番なのである。以下に私見を述べたい。
北朝鮮が、2月24日、宇宙開発のための実験用通信衛星「光明星2号」の打ち上げ計画として予告した長距離弾道ミサイル発射問題は、発射か中止かの決着に近付いている。消息筋は、物理的な発射準備が進んでいるとの見通し(ただし燃料注入は未確認)を示し、米韓合同軍事演習(3月9-20日)や3月8日実施の最高人民会議第12期代議員選挙と合わせて発射する可能性があると見ている。しかし、発射は北朝鮮にとっても大きな政治的賭けを意味しよう。国連安保理は、北朝鮮に弾道ミサイルの発射や計画に関するすべての活動を停止することを求める決議(06年決議1718など)を採択しており、日米韓などは人工衛星でも決議違反になると警告しているからである。使用されるミサイルが、テポドン2号(射程約6000キロで、米国のアラスカやハワイ周辺まで到達する)か、その改良型(2006年3月、米国下院軍事委員会で、ベル在韓米軍司令官は、北朝鮮が射程約1.2万キロ以上の「テポドン3号」の開発を行っていると証言した)とされることからも当然である。
北朝鮮では、金正日総書記はほぼ職務に復帰したようである。後継者問題でもめている時期でもある。暴走するとは限らないが、オバマ大統領を揺さぶるためにも発射に踏み切る可能性は充分有り得る。24日の発射予告自体が、クリントン米国務長官のアジア4か国歴訪の直後だった。しかし、それは間違った決断になろう。オバマは、2月23日、次期国防次官に北朝鮮への先制攻撃論で知られるアシュトン・カーター氏を任命した。24日の麻生総理との日米首脳会談でも、北朝鮮が緊張を高める行動をとるべきでないと一致して警告した。麻生総理は、記者団に「ミサイルについては発射されたときの初動が大事なんであって、直ちに対応していくことが大事ということを話しました」と述べている。国防総省関係者やキーティング米太平洋軍司令官も、大統領の命令次第としつつ、北朝鮮が弾道ミサイルを発射しても撃ち落とせる確率が高まっていると指摘している。
我が国も発射の抑止を第一としつつ、ミサイル防衛(MD)システムの発動を排除しない方針と報じられる。なお神奈川県は、職員や県立高校教員らに、県内にミサイルが着弾した場合、夜間や休日でも全員職場に参集するよう要請している由(2月28日付東京新聞)である。発射の後は国連の新決議も迅速に行われようし、我が国も制裁を強化しよう。要するに、北朝鮮の瀬戸際外交は見透かされている。金正日総書記らの賢明な決断に期待する。実は、もっと警戒すべきは、「2008年版韓国国防白書」(2月23日韓国国防省)の中で明らかにされた、北朝鮮による射程3000キロ以上の新型中距離弾道ミサイルの2007年の実戦配備である。06年7月北朝鮮はテポドン2号とともにノドンなど計7発のミサイル発射実験を実施した。移動式で固形燃料と見られる新型中距離弾道ミサイルは、数が多いことからも、テポドンより我が国防衛にとって危険な存在となるだろう。
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