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2009-03-31 00:00
孤立主義に反対するアメリカの新しい動き
河村 洋
NEW GEAR代表
イラク戦争への世界的な批判によって、アメリカの世論は孤立主義の方向に向かいつつある。左派が「チェンバレン的な小アメリカ」主義に陥りつつあるとすれば、右派は「アメリカ・ファースト」主義に後退しつつある。過激イデオロギーの世界的ネットワーク、ならず者国家、ロシアと中国の再台頭がつきつける挑戦の前で、我々自由世界の秩序を守るためには、引き続きアメリカが強く世界に関わってくれることが必要だ。
そうした国際政治情勢の中で、国際秩序へのアメリカの積極的介入を呼びかける新しいイニシアティブが発足した。『フォーリン・ポリシー』誌が運営する“The Cable”というブログのなかで、カーネギー国際平和財団のロバート・ケーガン上級研究員、『ウィークリー・スタンダード』誌のウィリアム・クリストル編集長、そしてダン・セナー元イラク暫定政府報道官が、この運動を取り上げている。「外交政策イニシアティブ(FPI)」という名のこの団体は、3月31日に開催される初のイベントで、対アフガニスタン戦略を議論する。トップクラスの政策形成者達がゲスト・スピーカーとして招かれている。その顔ぶれは、ジョン・マケイン上院議員、新アメリカ安全保障センターのジョン・ネーグル所長、民主党のジェーン・ハーマン下院議員、共和党のジョン・マクヒュー下院議員、カーネギー国際平和財団のアシュリー・テリス上級研究員、そして元アフガニスタン駐留軍司令官のデービッド・バーノ陸軍中将である。
ネオコンの動静を見守ることでよく知られている“Lobelog”というブログは、最近の記事で「FPI」を今はなき「PNAC(新世紀アメリカのプロジェクト)」になぞらえているが、「FPI」は党利党略の産物でも、反オバマ政権の政策提言を目的としたものでもない。初のイベントに民主党の政策形成者たちも参加し、ゲストとして講演を行なっていることでも、そのことは分かる。
オバマ政権がブッシュ政権より孤立主義の傾向を強めるかどうかは、予断を許さない。オバマ大統領の外交政策は、これから続くG20ロンドン・サミット、ストラスブールとケールで開催されるNATO首脳会議、そして北朝鮮のミサイル発射によって試される。しかしオバマ大統領の就任は、アメリカが世界への介入を弱める傾向の象徴だと見る向きもある。権威主義的な敵対勢力や挑戦者達がアメリカをなめてかかるようなら、これは我々の自由世界秩序を脅かすことになる。よって、「問題によってどのような政治的な立場をとろうとも、そうした違いを超えて、手を携えて孤立主義に異を唱える」ことが、死活的に重要なのである。
私は、「FPI」の設立趣意書に記されている文章、すなわち「9・11以後の国際安全保障環境では、アメリカは国際的関与と同盟諸国に背を向けることはできない。同盟国には、20世紀にファシズムと共産主義の打倒で共に戦った国々もあれば、最近になってイラクとアフガニスタンなどで自由を得た市民達のように、新しくアメリカと手を結ぶ者もある。国際的な関与から退いて、我々の経済的な課題が解決されることはない。逆に事態が悪化するだけである」という文章に強く同意する。これは世界金融危機に目を奪われているオバマ大統領と主要先進諸国の指導者達に対して、死命を制する重要な提言である。我々は再び歴史からの休暇を過ごすわけにはゆかない。
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