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2009-04-02 00:00
景気回復で発言力を増す中国
塚崎 公義
久留米大学准教授
米国発の金融危機で世界経済が大混乱している中で、中国経済がいち早く回復の兆しを見せている。輸出の激減を内需拡大策が補っているもので、固定資産投資額は高い伸びを見せており、落ち込んでいた鉄鋼生産は既に回復しており、自動車販売も高い伸び率を見せはじめている。今後とも、輸出の落ち込みを内需がカバーして景気が回復していく可能性が高いと考えてよいであろう。そのこと自体は喜ばしいことであり、日本の景気を回復させる重要な要因として大いに期待されるところである。しかし、外交という観点から見ると、喜んではいられない。中国の発言力が飛躍的に高まりかねないからである。
1990年代以降、中国は経済の高成長により世界の工場として注目されるようになった。昨年は中国の成長を材料に資源価格バブルが発生した。新興国経済の発展により、先進国だけでは様々な経済問題に対処できなくなり、中国などを加えた国際会議が頻繁に開かれるようになった。こうした変化は、中国のプレゼンスの高まりを映じたものではあったが、これまでは中国が世界経済に迷惑をかけないように先進国が枠をはめるという面が強かった。
しかし今回、中国が世界経済のアンカーとして世界不況の深刻化を押し止める役割を担うとすれば、世界経済に於ける中国の位置が大きく変化し、発言力が急激に増して来るであろう。ただでさえも日本経済の影が薄いなかで、このまま中国だけが存在感を増していくようなことになれば、アジアの経済統合などに向けた日本の発言機会が一層減少し、中国がアジアの盟主として欧米と渉りあう世界が早速に到来してしまうことになりかねない。そうならないためには、日本として可能な限りの景気対策を早急に講じ、中国と並んで世界に先駆けて景気を回復させる必要がある。前回拙稿「早期の景気回復が最大の国際貢献」でも記したように、積極的な対策さえ採れば、日本経済を早期に回復させることは、出来ない話ではないのである。
中国との比較で考えても、日本が格段に不利な状況というわけではない。中国経済は日本の高度成長期に似た需要の強い経済であること、中国は民主主義国家ではないので政争の具に使われる心配なく、思い切った経済対策を採り得ることなどは、中国に有利な材料であるが、他方で中国経済がバブルの後遺症に苦しんでいることは、日本に有利な材料である。日本の今次不況は輸出の激減によるものであるが、輸出が激減しているのは中国も同じである。日本経済が中国の回復に助けてもらうのか、中国と同時に回復し、並んで世界経済の回復を牽引するのか、日本のプレゼンスを大きく左右する正念場である。是非とも採り得る対策はすべて動員して、全力で景気回復に取り組んでいただきたい。
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