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2009-04-05 00:00
(連載)脱皮しつつあるNATO(2)
矢野 卓也
日本国際フォーラム研究員
このように、今次首脳会議は、第二次大戦来の独仏を中心とするNATOをめぐるしがらみが解きほぐされたかたちでの開催となった。冷戦期には鉄のカーテンの向こう側にいた東欧諸国も次々にNATO加盟を果たしており、今回新たにアルバニアとクロアチアの加盟が承認されることとなる。先に触れた「Keep the Americans in, the Russians out, and the Germans down」のスローガンのうち、「Keep the Russians out」については、いまだ問題解決とは言いがたいが、多くの懸案を抱えつつも、少なくともNATOとしては、ロシアを「締め出す」ことにより事態を膠着させようと望んではいないようである。昨年のグルジア紛争以来活動が停止していた「NATOロシア理事会」も再開される見通しである。
そして、米国である。速報によれば、オバマ大統領は、昨日、現地の4千人の市民を前に演説をし、「ヨーロッパは、テロリズムとの戦いに米国だけが責任を持つ、などと期待してはならない」と語ったという(4月3日付WEB版『フィガロ』)。米国はこれまで以上に欧州諸国と対等なパートナーとして、テロやその他の問題について取り組む姿勢をとりつつある。アフガニスタンにしても、アメリカ独力で事態を打開できる状況にはない。今回の首脳会議でも、アフガンへの民・軍の人員増派は主要な議題となっているが、オバマの提案する「アフガン新戦略」を加盟国はおおむね好意的に捉えており、NATOとしての協調した行動が期待される。アフガン復興をめぐる各国間の認識の違いはあるものの、物別れに終わることは避けられそうだ。
冷戦が終焉して以来、現状の変化への対応に追われるかたちで今日に至ったNATOであるが、将来にむけたNATOのあり方を模索するのは、むろんこれからの課題である。加盟各国の思惑は一枚岩とは言いがたく、すんなり答えを出すことは難しい。あくまで「大西洋同盟(Atlantic Alliance)」として当初のあり方を保つのか、あるいはフランス色が前面に出た「ヨーロッパ化(Europeanization)」の方向に進めるのか、はたまた我が国や豪州、アフリカなどを含めた域外諸国との連携を強化し、「世界の警察組織」のようなものに進化させるのか。いずれにせよ、NATOは、過去のしがらみを捨てつつある今こそ、新たな脱皮の好機にあるといえよう。
NATOは、これから今後のNATOのあり方を規定する「新戦略概念文書」の作成にむけて、「賢人グループ」を組織し、具体的な青写真を描かせることとなる。この文書は、来年末にリスボンで開催予定の次回首脳会議で採択される運びとなるが、時間はまだたっぷりある。じっくり議論して、「欧米の知性いまだ健在なり」というところを示してほしい。むろん、我が国とて他人事ではない。NATOがいかなる方向に進もうとも、もはや日本を含めた他の地域や国が無関係でいられることはないのだ。集団的安全保障をめぐって、あれこれ神学論議にふけっている場合ではない。東アジアとしても、欧米と共に、安全保障において「共進化」をとげるべき時代に入りつつあるのではないだろうか。(おわり)
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