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2009-04-13 00:00
北朝鮮のミサイル発射とオバマ外交
角田 勝彦
団体役員・元大使
最近の報道によれば、4月5日の北朝鮮の弾道ミサイル発射に関し協議を重ねてきた国連安保理は、やっと妥協に達し、13日にも議長声明(全会一致が原則)を発出する。形式は、6カ国協議への悪影響を懸念した中国などに配慮し、拘束力を持つ決議でなく、議長声明になったが、内容は、安保理議長のメキシコのヘラー大使が、11日述べたように「明確で強い声明」になった。すなわち「発射」を安保理決議1718に「違反」と非難し、同決議に基づく制裁措置の履行徹底を加盟国に要請する、など日本の当初からの主張を大きく取り入れた。また日本政府は10日の閣議で、北朝鮮への日本独自の経済制裁措置を1年延長することを決めた。
北朝鮮の反応が注目される。そのミサイルと核弾頭小型化技術の進化に伴い、テポドンもさることながら、すでに200基余が配備されているとされるノドン(日本全土がほぼ射程圏内に入る中距離弾道ミサイル。固形燃料。移動式)の脅威が増している。MD(ミサイル防衛)などによる対応は技術的困難性も指摘されている。周辺諸国の核ミサイルへの対応と同様、結局は外交による安全保障が第一となろう。そこで注目されるのは、米国の態度、とくに欧州歴訪中のオバマ米大統領が5日、プラハ演説で公表した「核兵器のない平和で安全な世界」を追求する戦略である。
すなわち、オバマ大統領は、(1)第1次戦略兵器削減条約(START1)に代わる米露新核削減合意や米議会で塩づけにされている包括的核実験禁止条約(CTBT)批准など核保有国の軍縮、(2)核拡散防止条約(NPT)の有効性回復とジュネーブ軍縮会議で停滞している兵器用核分裂物質生産禁止(カットオフ)条約交渉の推進、(3)1年以内に核安全保障サミットを米国で開催し、核テロ阻止体制を4年以内に確立する核テロ防止外交を、オバマ外交の主軸の1つに位置づける方針を鮮明にしたのである。来年春には核拡散防止条約(NPT)の再検討会議が開かれ、核保有国と非核保有国の不毛なせめぎ合いが繰り返される見通しが強いなか、オバマは「米国は核兵器を使用した唯一の核保有国として、核廃絶に向けて行動する道義的責任がある」と宣言し、核保有国が率先して「核兵器のない平和で安全な世界」を追求することを求めたのである。
これに対し他の核保有国からの反応は冷淡だった。核兵器の堅持方針をとる中露仏では、演説への関心は低く、露仏では「不快」との声さえある。一方、日本及び独を含む核非保有国からは支持の声が多い。米国内では賛否両論があるが、支持は強い。例えば7日付の米紙ウォールストリート・ジャーナル紙は、「核の幻想主義者」と題した社説で、「オバマ氏の道義的権威では、テヘラン、平壌を抑えきれない」と批判したが、来日したマケイン上院議員(昨年の共和党大統領候補)は10日、「大統領はこの機会をつかんでほしい」と支持を表明し、包括的核実験禁止条約(CTBT)の上院での批准承認については「検討する用意がある」と述べた。
北朝鮮はこれに挑戦するようにミサイルを発射したが、オバマは大統領選で「北朝鮮が核計画の検証に応じなければ、制裁を再発動すべきだ」としており、プラハ演説でも「ルール違反は処罰されなければならない」と北朝鮮を強く批判している。今後の実際の対応は、オバマ政権にとってさまざまな意味で試金石となろう。
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