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2009-04-24 00:00
首相、安保・防衛を総選挙の争点に
杉浦正章
政治評論家
衆院解散切迫で総選挙の争点が鮮明化してきた。景気、外交、安保・防衛で対立軸を浮き上がらせる政府・与党に対し、民主党は内政で巻き返しを図る構図だ。首相・麻生太郎は場合によっては、与野党最大の対立軸である集団的自衛権を行使できるように、憲法解釈を変更する方向に踏み出す構えも見せており、これが実現すれば、超ど級の争点となる。政府・与党の攻勢に対して、民主党はどうしても受け身になっている印象だが、その原因は“小沢続投”が“おんぶお化け”のようにしかかっていているからだ。
4月22日に元首相・安倍晋三が麻生と会ったが、この時期に何かと思っていた。しかし翌日に解けた。安倍の私的諮問機関「安保法制懇」で座長を務めた元駐米大使・柳井俊二を、麻生が招いて会談したからだ。集団的自衛権の行使を違憲とする現行の政府解釈について意見を聞いたのだ。
我が国の安全保障問題は、米国に向かう北朝鮮のミサイル迎撃問題にせよ、自衛隊の海外派遣にせよ、喫緊の海賊対策にせよ、すべてが「集団的自衛権」の問題に帰着して、議論が進まない。「集団的自衛権を持っているが、行使できない」とする大矛盾の政府解釈のままだからだ。安保法制懇は、集団的自衛権の行使を容認するよう求める提言を取りまとめ、前首相・福田康夫に提出したが、黙殺された。麻生は最近は慎重だが、かっては集団的自衛権行使容認論者だ。この時点で柳井を呼んだのは、安倍が助言し、これを受け入れる気持ちがあるのだろう。しかし麻生は反発が生じると、すぐに変節するから、まだ分からない。
また、政府・与党は海賊対処法案を衆院通過させ、成立のめどをつけた。海賊対処は一般うけしやすく、選挙対策になるだろう。更に加えて憲法改正原案審議の衆院憲法審査会の定数や議決要件を定める「規程」案提出の動議を、4月23日衆院議院運営委員会に出した。憲法改正論議まで争点にする構えを見せているのだ。同委では、さすがに民主党の玄葉光一郎が「憲法を政争の具にしたいということか」と与党を強く批判した。背景には、得意の外交・安保で野党を選挙論争に持ち込もうという、麻生の思惑が垣間見えている。事実、幹事長・細田博之に安保問題で争点を明確化するよう指示している。外交・安保論議は、党内にかっての社会党左派を抱えて、腰が定まらない民主党にとって、最大のアキレスけん。今後左寄りの新聞の反発を計算に入れても、自民党支持層の回復には、北ミサイル迎撃問題と同様にプラスに作用するだろう。
一方これに対して民主党は、内政で切り返しているが、迫力に欠ける。副代表・岡田克也が「世襲と献金が次の総選挙の大きな争点になるのは間違いない」と指摘したとおり、4月23日「議員の世襲制限」と「企業・団体献金の全面禁止」を打ち出した。世襲制限は自民党の動きを察知して先取りした形だ。自民党には反対意見が強く、まとまるかどうか危ぶまれているだけに、得意の“敵失攻勢”を先取りした形だ。企業献金の全面禁止もマスコミ受けはする。しかし代表・小沢一郎の全面禁止発言を「盗っ人猛々しい」と自民党が批判したとおり、小沢続投問題が手かせ足かせとなって説得力がない。要するに、小沢が居座ったままでは、たとえ百日説法しても、選挙民から「ところで小沢さんは」と聞かれれば、全てがフイになるのだ。
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