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2009-04-24 00:00
(連載)日本は“Under-achiever”から脱却せよ(1)
矢野 卓也
日本国際フォーラム研究員
突然であるが、北朝鮮は大国であろうか、小国であろうか。あるいはイランは大国だろうか、小国だろうか。ばかげた質問かもしれない。そもそも北朝鮮やイランに関し、そのようなことをあれこれ考えること自体、不毛だともいえる。どちらもただただ「こまった国」であって、大国か小国かなどはこの際どうでもいい、という意見もありうるからだ。ただ、そうだとしても、どちらの国も国際的に多大な影響力を持っていることは否定できない。これは「こまった国」に限らない。国際社会では、影響力を行使しうる国としえない国とが峻別される。ではこの国際的影響力とはいったい何なのか。そして、そういった影響力を持つ国は大国なのだろうか、小国なのだろうか。
そのようなことを考えさせてくれる文章に出くわした。米国の国際問題の専門誌『Foreign Policy』(ウェブ版)に4月21日付で掲載されているスティーヴン・ ウォルト(Stephen M. Walt)ハーバード大教授の"Over-achievers and Under-achievers"という論文である。いうまでもなくウォルトは「脅威の均衡(Balance of Threat)」理論で著名な現実主義に立つ論客である。タイトルにある"Over-achievers"と"Under-achievers"は、それぞれ国力に比して予想外の影響力を持つ国と国力に比して意外に影響力が少ない国を指す。つまりウォルツは、国力と国際的影響力の相関性を問うているのだ。"Over-achievers"と"Under-achievers"は、いずれも国力と国際的影響力の一般的な相関性---国力が大きい国ほど国際的影響力がある---から外れた存在と見なされる。
ウォルトは、その論文の中で"Over-achievers"の例としてスウェーデン、北朝鮮、カナダ、イスラエル、シンガポールを、また"Under-achievers"の例として日本、インド、ドイツ、ロシア、ブラジルを挙げている。国の選択が妥当かどうかはともかく、こういったグループ分け自体がユニークである。なにせ、スウェーデンと北朝鮮が同じグループで、インドとドイツが同じグループにあるのだ。つまり「こまった国」であろうとなかろうと、また統計的にみて国力の高い「大国」であろうとなかろうと、国際的影響力は別の変数に左右されるというわけである。このような議論は、少なくとも国力(power)第一の現実主義者からはあまり出てこない発想であり、たいそう興味深い。むろん別問題として、achieveする内容と、その是非が問われるのはいうまでもない。
ウォルト自身、このような議論をいわば試論として展開しているようで、"Over-achievers"と"Under-achievers"がいかにして誕生するかについて、「さしあたりの考察(tentative thoughts)」しか出していない。曰く、個人的リーダーシップ、歴史、大国との関わり方(小国の場合)、国際環境における「特殊ニッチ(a specialized "niche")」等々が作用するとのことだが、いずれもそれらしいもっともさはある。論文の末尾でウォルトは、「可能な説明は他にもあるはずだから、読者自身の考えや批判を乞う」と締めくくっている。知的刺激に富む問題提起といえよう。と同時にウォルト自身、今後どのように議論を精緻化していくか、が気になるところである。(つづく)
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