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2009-05-10 00:00
「核なき世界」と北朝鮮問題
角田勝彦
元大使
オバマ大統領の「核なき世界」を目指す戦略は、かなり好調な滑り出しを見せている。多くの国が好意を持って迎えており、難航してきたNPT運用検討会議にも進展の可能性が見え始めている。米国防省自体、4月下旬、8年ぶりに、今後5~10年の核戦略の指針となる「核戦略見直し報告」(NPR)の作成作業に着手した。来年初めに議会に報告する。これに呼応した中曽根外相の「核軍縮(11の指標)演説」および同趣旨の麻生首相の発言も、世界で唯一の被爆国からの支援の声として、相当の評価を得ている。4月末の日中首脳会談において、中国も、自国への批判は事実でないと否定しつつ、基本目的には賛同せざるを得なかったようである。
その保有する巨大な核戦力(核弾頭および運搬手段)から、この戦略の成否に大きな影響力を持つロシアは、米国とともに、今年12月に失効する第1次戦略兵器削減条約(START1)に代わる新たな核軍縮条約の年内締結を目指している。米ミサイル防衛計画MDと交渉を絡めるなどの主張は、バランスをとりつつの削減という基本と乖離するものではない。プーチン首相は、訪日を控えての5月9日の日本人記者団との会見で、(日本の)11の指標についても肯定的に評価すること、ロシアとしても核廃絶を目指すこと、(中国など)他の保有国も含め全員が一緒に進まねばならないことを述べた。
ところでオバマ戦略には、(1)核保有国の軍縮(2)核不拡散(3)核テロ防止の3つの重点がある。核テロ防止は、将来の問題ではない。たとえばクリントン米国務長官は4月下旬、下院で「パキスタンは、致命的に危険」と証言し、懸念事項の一つとして、その保有する核兵器の貯蔵施設や核施設が国内に分散して設置されていることを挙げた。核テロの防止には、米国主導の大量破壊兵器拡散防止構想(PSI)の拡大強化が必要であろう。
北朝鮮は、この点からも問題である。6カ国協議に「絶対に参加しない」と述べ、核実験をもほのめかすその強硬姿勢は、オバマ政権を非難し、現状のままなら米国との対話をも拒否すると示唆するに至っている。オバマは、現実主義者である。米国がとってきた融和的姿勢が効を奏さないことが明らかになれば、次に打つ手の用意に進むであろう。核軍縮により裨益する我が国としては、オバマ戦略支持を第一として、あまり異を唱えるべきではない。
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