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2009-06-09 00:00
止まらぬ「チェンジ」の風
杉浦正章
政治評論家
「チェンジ」の風が止まらない。「西松問題」のダメージから民主党はほぼ完全に回復した。民主党の政党支持率ががあらゆる世論調査において回復傾向を維持している。期待する政権も「民主党中心」が「自民党中心」を圧倒しており、衆院選挙前にかって見られなかった現象である。過半数を民主党だけで獲得できるかどうかは微妙だが、比較第一党になり、政権に向けての政界再編の主導権を握りそうな気配である。自民党の残された道は、下野も視野に入れながら、連立で過半数達成になお望みを託す方向だろう。首相・麻生太郎が都議選候補全員の応援に乗り出したことが象徴するのは、既に衆院選挙の火ぶたが切られたということだろう。
折から有力報道機関の世論調査結果が公表されたが、NHKの政党支持率調査は自民27%、民主24%でその差が「西松問題」以前の1月の時点に戻っている。小選挙区制はリーダーの人気が左右する要素が大きいが、首相にどちらがふさわしいかでは麻生17%、鳩山が33%だった。読売は、麻生33%、鳩山44%であり、いずれも差が10ポイントを上回った。この傾向の意味するものは、民主党が、小沢一郎の第一秘書逮捕に始まった「西松問題」の影響を離脱して、有権者の「政権交代志向」を背景に、極めて有利な状況に移行しつつあることを物語っている。まだ、報道機関などの衆院選動向調査が出ていない段階であるが、一定の方向を読むことは不可能ではない。
元財務相・塩川正十郎の分析が意外に良い線をいっている気がする。塩川によると「まず、最後まで不明が30議席、自民、民主両党以外の政党が全部で50議席。この合計80議席を除いて、残る400議席を自民、民主で分け合う。自民党は180議席から200議席。民主党は220議席から230議席で、不明の30議席の動向が大きなウエートを持つ」というのである。民主党選対委員長の赤松広隆の分析とも似ている。赤松は「比較第1党は取れるが、単独過半数には足りない。現在は社民党や国民新党、無所属などと合わせて過半数の241議席をクリアしている状況ではないか。自民党は200前後か、ずっと落ち続ければ190ぐらい。民主党は今の時点で220ぐらいはいっている。どっちが勝っても30、40議席の大差はつかない」と分析している。
この傾向が意味するものは、たとえ小選挙区で自民党が善戦しても、比例区をバネに民主党が躍進しそうな状況であることだ。背景には、米国で起きたのと似た「チェンジ」の風潮がある。三代続いた迷走首相への不満、消えた年金に象徴される失政、そしてなによりも大不況などが、未曾有の自民党離れを引き起こしている。それが投票行動に直結しそうなのだ。うっ積した不満をガス抜きのように総選挙ではらす流れだ。本来“保守バネ”に作用した高齢者層も「後期高齢者医療制度」で離れたままである。一度ガス抜きをしないとおさまらない政治状況が現出している。これが日本の将来にとって吉と出るか凶と出るかは誰も分からない。中曽根康弘が民主党の政権担当能力について8日、「国を背負う力と素質は十分ではない。日本に相当な混乱が起き、その混乱に外国がつけ込むことにつながる心配がある」と分析しているが、その通りだ。オバマ政権のように希望への「チェンジ」と言うより不安への「チェンジ」の色彩が濃厚だ。
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