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2009-06-17 00:00
オバマの「核ゼロ」演説と両極端な日本の対応
吉田 康彦
大阪経済法科大学客員教授
オバマ米大統領が4月5日プラハ(チェコ)で行った「核ゼロ」演説は、「世界で初めて核兵器を使用した核保有国として、米国には道義的な責任がある」と認め、「核兵器のない世界実現をめざす」とした点で画期的なものだったが、日本国内の反応は両極端に分かれている。いうまでもなく、被爆地、広島・長崎では市長、被爆者、反核団体が一体となって、冒頭に引用した部分を過大評価し、オバマ大統領への期待を膨らませて、今秋にも予定されている同氏の訪日に際しては、ぜひ被爆地を訪問するよう働きかけている。「世界核軍縮サミット」の現地開催にも意欲をもやしているという。
しかしオバマ大統領がプラハで開催を提唱したのは「(テロ対策などの)核セキュリティーに関するサミット」であって、核廃絶をめざした「核軍縮サミット」ではない。秋葉広島市長はオバマ提案が世界の世論となることを期待して、Obamajority (オバマジョリティー)などという合成語を作りだしてはしゃいでいたが、オバマ氏はプラハ演説で、同時に「この地上に核兵器が存在する限り、米国は核を放棄しない。同盟国に対する拡大抑止(核の傘)は守る」という趣旨の発言もしており、手放しで歓迎すべき内容ではない。全体としてほどよくバランスのとれた演説だったのだ。
被爆地の市民がムード先行の感情論で受け止めるのは仕方ないとして、問題は、日本政府がオバマ演説の現状維持の側面から一歩も出ず、相変わらず日米同盟の「核の傘」にしがみつき、「唯一の被爆国」の“特権”を行使していないことである。直後に中曽根外相が東京で「世界的核軍縮のための11の指標」と題する講演を行ったが、ほとんどがオバマ提案をなぞった内容だった。せめて米国に対し核の「先制不使用」を訴えてほしかった。また、朝鮮半島非核化のためには「北東アジア非核地帯」実現が不可欠だ。北朝鮮の目前の脅威が存在するにせよ、お互いに長期的ビジョンを打ち出し、それを世界の世論に広げていくことが必要なのだ。
6月16日に衆議院が、次いで17日に参議院が、それぞれ核廃絶決議案を全会一致で採択したが、これも抽象論で新味がない。「核軍縮・不拡散の取り組みと実効性ある査察体制の確立を積極的に進めるべきである」という文言があるが、「実効性ある査察体制の確立」とは何か。北朝鮮やイランに対し「実効性がない」のは事実だが、それならどうすればいいのか、何の説明もない。主権国家を構成単位とする国際社会において強制力ある査察など存在し得ないのだ。国際緊張の除去と国家間の信頼関係の構築なくしては、何をするにも実効性を担保できない事実を知っておいていただきたい。
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