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2009-06-22 00:00
「天の声」解明には参考人招致しかない
杉浦正章
政治評論家
小沢事務所による「天の声」旋風は、吹き荒れるには吹き荒れたが、民主党幹部が「選挙に影響ない」とうそぶいている。確かにその通りかも知れない。政治的には一過性の性格を帯びている。とうとうたる「政権交代」待望の波は、西松事件の公判で検察が明らかにした「収賄」に近いとも言える巧妙、かつ悪質な偽装献金事件をも呑み込もうとしているのだ。大阪地検の郵便不正割引事件の捜査が、民主党国会議員に波及するかどうかが、最後の材料だが、これもどうなるかは定かではない。ただひとつ「天の声」を一過性にしない方法がある。それは民主党前代表・小沢一郎の国会参考人招致だ。
西松建設の政治資金規正法違反事件の初公判で検察は、小沢の事務所が「天の声」で公共事業を受注した経緯を明らかにしたが、その内容は「違法性がない」としてきた小沢の主張を覆し、小沢の事実上弁護に当たった民主党の「第三者委員会」の主張がいかに第三者の名前を使ったまやかしであったかを物語るものであった。読売新聞がその社説で「検察側が主張するように天の声を得るための金だったとすれば、西松建設からの献金は賄賂(わいろ)に近いことになる」と指摘しているのは、まさにずばり事件の核心を突いている。産経も「単なる形式犯という主張は、もはや説得力を失っているように見える」と読売と同様の判断だ。朝日も含めて中央紙は一致して「小沢の説明責任」を求めているが、民主党と小沢には説明しないで済んだ“成功体験”がある。つまり説明しなくても民主党支持率は自民党を上回り、選挙優勢の風が吹いているのである。したがって、この“成功体験”をもとに、今回もほおかむりを決めこむのだろう。あの小沢が初公判があったからと言って、説明責任を果たすわけがない。
この流れを読んでか、民主党内には深刻な反応はない。国対委員長代理・安住淳らは「衆院選には影響しない。心配はない」と高をくくった発言を繰り返している。7月14日の判決で西松事件は総選挙前にもう一度ヤマ場が来るが、恐らく民主党はこれも意に介さないだろう。一過性であるからだ。小沢が代表を辞任して、自民党は事実上攻撃対象が喪失したのである。しかし冒頭述べたように、国会に参考人招致問題を持ち出せば、マスコミは書かざるをえない。この問題はマスコミに継続して報道させられるかどうかがポイントだ。“成功体験”を覆らせることができるだろう。民主党が自民党の立場だったら確実に、参考人招致はおろか、証人喚問すらやりかねないだろう。
一方、民主党副代表・石井一の私設秘書だった倉沢邦夫容疑者(元凛の会会長)が暗躍した大型詐欺事件の郵便不正割引事件が、「大物民主党議員」へと波及するかどうかだ。問題の焦点は、民主党国会議員からの圧力がなければ、厚労省の公印偽造事件はあり得なかったことだ。厚労省が「政治圧力」もなしに“自主的”に公印を偽造するわけがない。本当に、地検の捜査で明らかになっているように、民主党議員が電話で厚労省幹部に「凛の会」を障害者団体として認めるように圧力をかけたとしたら、まさにその議員は詐欺事件の共犯となりかねない問題だ。大久保秘書逮捕などを上回るメガトン級の時限爆弾だ。いま永田町はこの一点をかたずをのんで見守っている。
自民党幹事長・細田博之は21日の民放テレビで、圧力をかけたとささやかれる議員について「有名な民主党大幹部だ。永田町で知らない者はいない」と述べた。もうちょっとで名前を出しそうだったが、惜しかった。民主党幹事長・岡田克也は苦し紛れに「どこかで大きな圧力が働いた」と、まるで政府・与党の圧力のような口ぶりだったが、明らかに口から出まかせだろう。総選挙前に件の大物議員に地検の事情聴取がなされた場合には、民主党のダメージはかなりのものとなるだろう。元幹事長・加藤紘一が「いま国民の政権政党への評価は、2~3週間で変わるくらい流動的だ」と述べているが、自民党は最後の巻き返しとして、これに期待するしかないのが現状だろう。
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