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2009-06-24 00:00
米日中三角関係に腐心するオバマ政権
鍋嶋 敬三
評論家
米国が大国として興隆しつつある中国との関与政策を強める一方、日本を含めた三角関係のバランスをどう取るか腐心している。中国が昨年、世界一の米国債保有国になり、軍事費では英国を抜いて米国に次ぐ第2の軍事大国にのし上がった。米中合わせた世界シェアは50%近く、軍事面ではG2が突出することになった。オバマ政権が積極的に取り組もうとしている気候変動問題でも、中国抜きの解決はあり得ない。米政権の国際協調路線に対して中国も良好な関係維持を望んでいる今、経済だけでなく政治・安全保障面での戦略対話で中国を「取り込んでおきたい」というところだ。一方で、同盟国である日本や韓国で北朝鮮の核・ミサイル開発を前に米国の抑止力に不安が生じれば、同盟関係を揺るがしかねない。日本に対する「拡大抑止」についての米国の新たな強い決意表明が必要である。
オバマ政権でアジア・太平洋担当の国務次官補に指名されたカート・M・キャンベル氏は、かつて国防副次官補として日米安保共同宣言や日米防衛協力の指針(ガイドライン)の見直しにかかわった有数の知日派である。上院外交委員会の公聴会では対中関係、北朝鮮と核拡散、同盟関係などについて明確な考え方を披瀝した。アジア政策の出発点は、オバマ政権が中国をどう認識しているかである。「中国は今後数年以内に世界政治における重要なプレーヤーになる非常に大きなチャンスがある」というのが基本的な見方だ。キープレーヤーとしての役割を果たしつつある中国が積極的に深く関与しない限り、朝鮮半島、中央アジア、気候変動などの問題で進展は極めて難しいとの見立てだ。従って「対中政策のカギは大国としての責任を自覚させること」(キャンベル氏)である。
しかし、日本を含めた三角関係になると、米国の外交政策にとっては複雑な要素が加わることになる。同盟国である日本は、中国との間で国連安全保障理事会の常任理事国入りや東シナ海のガス田開発など、利害対立の根が深く張っており、歴史問題をきっかけにいつ厳しい局面を迎えるか分からない不安定さがつきまとう。小泉純一郎政権当時の日中対立が米国をいら立たせたことが想起される。北朝鮮の核開発についても、6カ国協議の座長である中国の限界も見えてきた。北朝鮮の暴走が続くほど日本国内に核武装論や対敵基地攻撃論が声高に語られる情勢である。キャンベル氏のアプローチは「中国か、日本か」のゼロサム・ゲームではなく、米日中の三角関係の中でどのような外交がなし得るかということである。中国の興隆は米国にはとてつもなく大きな意味があるが、「短期的により直接的で緊急なのは対日関係である」という。日本と最強のパートナーを組むことが、中国との関係の上で最善の道だと断言している。
「核の北朝鮮」を認めないことが「米外交の基礎だ」としたうえで、キャンベル氏は「拡大抑止」への米国の関与を日本や韓国に再保証することが極めて重要であることを力説した。オバマ大統領が6月16日の米韓首脳会談で「核の傘」を公式に再確認したのは、北朝鮮の核の脅威に対して米韓同盟が揺るぐことに懸念を強めたためだ。オバマ政権はブッシュ政権時代の経済中心の米中戦略対話の枠組みを政治・外交にも拡大して7月にもワシントンで開く予定だ。これに合わせて日米中三カ国は初の政策対話を開く方向で調整中と伝えられる。日本がアジア政策、気候変動など地域的、世界的な課題で日本独自の視点からイニシアチブを取り論議を深めることが、日米中関係の発展に寄与するだろう。
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