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2009-06-24 00:00
イラン・アラブ・イスラエルの間に働く地政学的論理
藤井 厳喜
ケンブリッジ・フォーキャスト・グループ・オブ・ジャパン代表取締役
最高指導者、ハメメイ師が呼びかけたにもかかわらず、イラン国内における改革派(反政府派)の抗議活動は益々エスカレートしている。様々な情報が飛び交っているが、既にかなりの数の死者がデモ参加者の間に出ているようである。テヘランでは、機動隊によるデモ参加者へのかなり露骨な暴力的制圧が行われているようである。
イランは、ペルシャ民族を中心とする国家であり、潜在的にはアラブ民族と対立している。宗教的に見ても、同じイスラム教ではあるが、アラブの主流がスンニ派なのに対して、イランはシーア派である。パーレビ政権下において、イランは親イスラエル的であった。何故なら、「敵の敵は見方」という論理が働いていたからである。アラブの背後にいて、アラブと対立しているイスラエルは、イランの潜在的な友好国だったのである。事情は、イスラエルにとっても同様であった。
イランとアラブとイスラエルの間に存在するこのような地政学的論理は、今日においても普遍的であり、イスラム原理主義的な政権下にあっても、イランは、潜在的にはアメリカやイスラエルと戦略的に手を組む可能性が存在している。その実例として、アメリカの対タリバン戦争におけるイランの協力をあげる事ができる。アフガニスタンのタリバン政権に対する戦争において、イランはアメリカに積極的な情報協力を行った。タリバン戦争の勝利を支えた外部的要因は2つあるが、1つは、ロシアの協力であり、もう1つは、イランの協力であった。イランは、明らかにスンニ派の原理主義者たるアルカイダを敵視しており、彼らを撃退するためにアメリカの力を利用すると同時に、それを機にアメリカとの関係修復を求めていた。アメリカ側がこれに応じる事はなかったが、そこに将来の変化をうかがわせる一つのサインが存在している。
アメリカとしても、アフガニスタンとパキスタンにおける戦争行動をエスカレートさせなければならない関係上、本音としては、イランとの関係を修復したいところである。イランをある程度アメリカ側にひきつける事は、イスラエルにとっても国益にかなった行為である。イランにおいては、モスクに対する自爆攻撃が起こったという情報もあり、ある情報筋は既に200人を超える死者が出ているとも伝えている。騒乱が短期に収束するとは思えない。
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