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2009-06-26 00:00
(連載)評価される「太平洋・島サミット」 の理念と戦略(1)
高峰 康修
岡崎研究所特別研究員
最近の我が国の国民感情は、ODAをはじめとする対外援助は無駄であるとして、対外援助に対して冷淡ないしは否定的傾向が極めて強い。確かに、中国に漫然とODAを供与し続け、その間に肝心の中国は軍拡をし、さらには自国より発展の遅れた国に援助して、影響力を拡大した、などという事例を見れば、自然な国民感情であると言える。また、ODAにまつわる汚職や腐敗は、対外援助に対するイメージを悪化させた。しかし、だからといって、対外援助が無意味であると捉えるのは誤りである。確固たる理念と戦略に裏打ちされた対外援助なら、それは我が国の重要な外交ツールになる。麻生総理は外相時代に対外援助に関して「情けは人のためならず」と言った。至言である。
5月22~23日にオーストラリアや太平洋の島嶼国や地域あわせて17の首脳を集めて北海道の占冠村で開催された「太平洋・島サミット」では、「太平洋環境共同体」を結成することで合意し、我が国は太平洋の島嶼国に対して、環境対策を中心に今後3年間で総額500億円の支援を表明した。これは、理念と戦略に裏打ちされた対外援助のよい前例になったと評価できる。太平洋の島嶼国は、地球温暖化が進めば、海面上昇による水没の危機や塩害が悪化するおそれがある。また、国土が狭いためにゴミ処理問題も深刻である。我が国は、今後、太陽光パネルや海水淡水化装置の設置、廃棄物処理などに支援を重ねていくことを約束した。これは、住民にとって必須の支援である。
太平洋の島嶼国に対しては、中国と台湾が外交関係を争って、援助合戦をしている。この地域には台湾と外交関係を持つ国が少なくないためである。また、中国の海洋進出戦略の一環でもある。そこで、我が国の太平洋における存在感が低下するのではないかと懸念されたわけだが、中台の援助のやり方と我が国の今回の援助では、方向性がまったく異なると言ってよい。先に述べたとおり、我が国は高い技術力を活かして太平洋地域の島民の生活に直結した援助を行うのである。どちらが、住民の心をとらえるか自明であろう。ジョゼフ・ナイ流にいえば、我が国のソフトパワーのほうがはるかに高いということになる。(つづく)
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