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2009-07-03 00:00
献金偽装の「蜘蛛の糸」を登り切れるか
杉浦正章
政治評論家
まるで芥川龍之介の「蜘蛛の糸」が自民党に垂らされたような光景である。「鳩山個人献金偽装」の糸だ。これをうまく登り切れるかどうが、総選挙前最後の“賭け”となる。具体的には首相・麻生太郎が「麻生降ろし」をかいくぐって、都議選直後の解散を思いとどまり、会期末解散まで「鳩山追及」を継続できるかどうかである。「蜘蛛の糸」が切れるかどうかは、そこにかかっている。「幻の党役員人事」をめぐる“袋だたき”で、またまた麻生内閣の支持率が低下することは避けられまい。静岡知事選にも、都議選にも、悪影響をもたらす。しかし、人事は解散に直結するとみた党内の反発が、いったんは治まり、都議選後まで休戦状態に入った形であろう。自民党内に筆者がかねてから指摘してきたように、「鳩山追及」のための解散先延ばし論が7月2日、急速に台頭してきた。
同夜には、自民党内各派事務総長らが会談、会期末の7月28日まで「鳩山献金偽装」の追及に取り組み、解散はすべきでない、との点で一致した。反麻生勢力の「麻生降ろし」のための解散先送りではなく、「鳩山追及」のための先送りである。もちろん願ってもない好餌に与党が飛びつかないわけがない。自公両党は「鳩山民主党代表の個人献金偽装問題」プロジェクト・チーム(PT)を立ち上げ、予算委員会に鳩山を参考人招致することを決めた。しかし、国会での追及には時間が必要だ。都議選直後の解散では、追及も中途半端で、恐らく鳩山が逃げ切るだろう。そこで会期末の28日解散なら、疑惑をかなり暴くことが可能だろう。しかし問題は、麻生がそこまで持つかどうかである。持たないと判断すれば、麻生は直後に「やぶれかぶれ解散」をするだろう。なんとか持つと判断すれば、会期末解散で「8月30日」か「9月6日」の投票となる。
民主党の対応だが、党執行部は「鳩山擁護」だ。国対委員長・山岡賢次は、与党の追及の動きを「自民党は恥も外聞もなく卑劣な手段を使ってくる。与党の自作自演につきあう必要はない」と断じた。参考人招致が卑劣とはどうしても思えない。唯我独尊の極みだ。そして民主党は、衆院政治倫理確立・公職選挙法改正特別委員会における、与党提出の公選法改正案と政党助成法改正案の審議を欠席した。鳩山の党首討論拒否と併せてみると、「逃げ」の一手で押し通そうとしている。その背景には、かねてから指摘しているように、黙り通した小沢一郎の“成功体験”がある。西松献金問題をだまり通して、代表を変えたら支持率が一挙に回復した。今回もだまり通しても、国民の政権交代志向は変わらないと判断しているのだ。
しかし、「献金偽装」はその悪質さにおいて第一級のわかりやすさがある。故人の名前を使って「マネー・ロンダリング」(町村信孝)、「贈与税をなくすためにやった」(菅義偉)と実に批判しやすいのだ。今後国会での追及の焦点は「参考人招致」だが、応じなければ強硬手段はいくらでもある。また鳩山と民主党不在で与野党が審議すれば、それだけで問題の所在を浮かび上がらすことも出来る。要するに、「鳩山個人献金偽装」の実態を明らかにして、「次の首相にふさわしい」かどうかの世論調査の支持率をどこまで引き下げられるかにかかっている。「蜘蛛の糸」が切れて釈迦に見放されないよう、いかに事を運ぶかだ。反麻生勢力も「麻生降ろし」の醜態をさらすより、鳩山追及の方がよほど効果的であることに気付くべきだろう。
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