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2009-07-08 00:00
民主党政権なら日米「外交・安保摩擦」必至
杉浦正章
政治評論家
あらゆる兆候からして、民主党政権実現の場合“日米外交・安保摩擦”の発生が予想される。現実に米政府関係者からも“懸念”の声が上がっている。「経済摩擦」は度々あったが、「外交・安保摩擦」は戦後の日米外交史でも珍しいことだ。首相・麻生太郎は総選挙の焦点に安保・防衛問題を取り上げようとしているが、政局をめぐる党内外の動きにかき消されがちである。政権を取ったら、社会党政権が日米安保是認に転換したように、民主党も「ころりと変わる」という見方もあるが、同党の場合確信犯的であり、そう簡単なことではあるまい。前代表・小沢一郎の「在日米軍は第7艦隊で十分」発言は、図らずも外交・安保問題での民主党の“知的水準”の低さを露呈させたが、この傾向は多かれ少なかれ他の民主党首脳らにも共通している。かっての社会党のような非現実的な観念論が背景に見られる。
しかし、米側の懸念はより具体的である。それは、自民党政権が営々として積み上げてきた自衛隊海外派遣路線が根本からくずれ、日米で合意を見た普天間基地の移転問題が見直される点に絞られるといってよい。元国防次官補のジョセフ・ナイは昨年民主党幹部との会談で、日米地位協定や普天間飛行場の移転見直しに動いたら、「反米と受け止める」旨述べるとともに、給油活動中止などがマニフェストに明記されても、やはり「反米とみなす」との懸念を伝えた。しかし、その後も民主党の方針は動いていない。給油継続のための改正新テロ対策特別措置法や、海賊対処法に民主党は反対している。政権を取れば、給油活動停止がまず対象となるだろう。法案に反対しながら、政権を取ったからといって現実路線にそう簡単に戻れるものではない。加えて大きな懸念材料が普天間基地問題だ。日米両政府は平成18年5月、米軍普天間飛行場の返還をめぐり、代替施設としてキャンプ・シュワブ沿岸部に1800メートル規模の滑走路をV字形に2本建設することで合意した。しかし民主党は普天間の県内移設に反対する立場であり、合意が撤回される公算が大きい。
幹事長・岡田克也は柔軟路線かと思っていたが、それどころか棒を呑んだように強硬姿勢である。民主党の政策掌握のために会談を求めた米国防次官(政策担当)のミッシェル・フロノイとの会談を物別れに終わらせている。フロノイは「日米同盟にとって大変なダメージになる」と懸念を表明するとともに、「普天間の問題を捨ててしまうと、すべての再編計画を失い、沖縄の問題を解決するすべを失う」と理解を求めている。こうした中で「民主党政権なら、日米摩擦が生ずる」という懸念が、米下院公聴会で表明された。6月25日の時事通信電によると、ナイが「民主党は日米同盟強化を進める現政権の多くの施策に懐疑的立場を表明してきた。日本政界の不確実性と再編成は今後数年間続き、同盟関係に摩擦を引き起こすだろう」と指摘。元国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長のマイケル・グリーンも「民主党は日米同盟を支持しているものの、『日本の自立性を高めよ』などと雑音を出している」、「民主党には政権移行のための綿密な計画がなく、安保政策をめぐる党内対立から、政権を取ってもいつまで続くか不透明だ」などと分析している。
まさに政権を取る前から米政府は、かなり正確に民主党政権の安保政策を掌握し、これに懸念を持っている。民主党幹部の言動を見ていると、旧社会党左派の路線を、残滓などと言うものではなく、直接背負って、受け継いでいる。一連の民主党幹部の言動は、近隣に核ミサイル製造にひたすら走り続ける国が存在し、核の傘を中心とする日米安保体制の再確認が不可欠な極東情勢とも逆行する。つまり極東の事態は急を要するのに、防衛・安保問題で日米間に摩擦を生じさせて、「反米政党・反米政権」の時代錯誤を演出しようとしているのだ。首相・麻生太郎が指摘するように「政権を取る事だけが目的の政党」という無責任さで対処するには、外交・安保ほど危険なテーマはない。「待ったなし」の現実的な対応が求められるにもかかわらず、不安材料が掛け値なしで山積している。
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