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2009-07-18 00:00
(連載)政権交代でも「拡大抑止」は安泰か?(2)
鍋嶋 敬三
評論家
「拡大抑止」にはジレンマがつきまとう。オバマ米大統領の「核兵器のない世界」(プラハ演説)に基づき米ロ首脳会談で核軍縮交渉が動き出した。しかし、ナイ教授は米国が急速かつ急激に「核ゼロ」に限りなく近づくとすれば、それが拡大核抑止に疑いを差し挟むことにつながってしまうというのである。そこで同盟関係の信頼性がいかに大事であるかを強調する。ナイ氏はこのジレンマについて「日米が極めて緊密な協議の必要に迫られている」と主張している。政権を目指す民主党にその用意はできているか?
ブッシュ政権で国家安全保障会議(NSC)のアジア問題上級部長を務めたマイケル・J・グリーン氏(ジョージタウン大学准教授)も、拡大抑止の能力と信頼性については、ナイ教授と同意見である。しかし、ブッシュ政権が北朝鮮による日本人拉致問題に進展が全くないまま、日本の反対を押し切って2008年10月にテロ国家指定の制裁措置を解除したことで、拡大抑止の信頼性を「著しく傷つけ」、日本に対して「信頼性の借り」ができたと批判した。ブッシュ・ホワイトハウスの対北朝鮮政策の揺らぎをうかがわせるものとして興味深い。
海賊対処法で第三国の船舶も護衛の対象になったが、グリーン氏は「集団防衛に向けての非常に重要な一歩を踏んだ」とその意義を高く評価した。米国やオーストラリアなどとの共同行動が念頭にある。改正新テロ特措法によるインド洋での給油継続は、欧米、アジア諸国から高く評価されている。この二法に加えて日本が主導権を取った国連安全保障理事会の北朝鮮制裁決議に基づく貨物検査特措法案にも民主党は反対した。同法案は衆院解散で廃案になる。自衛隊の積極的な海外活動への参加を求める米国の超党派の主張に対して、民主党はどう応えるのか。
民主党は総選挙のマニフェスト(政権公約)で日米地位協定の抜本的見直しを求めるという。協定の改定については、外務省が「日米安保条約本体の改定につながる」として反対してきた経緯がある。現行の地位協定が日本にとって満足なものであるとは言えない。だが、在日米軍(陸海空、海兵4軍の部隊、基地)の活動の根拠である地位協定の改定が、「拡大抑止」にもたらすインパクトは極めて大きい。改定を要求するからには、「核の傘」を含めて日米同盟関係をどのように構築し、動かしていくのかという包括的な戦略がなければ、米国を説得できない。野党体質のまま要求を突き付けるだけでは、同盟関係にひびを入れ、日本の安全を危うくするだけである。(おわり)
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