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2009-07-29 00:00
米中「G2時代」の到来と日本
河東哲夫
自営
この2日間ワシントンで、「米中閣僚会議」が賑々しく開かれた。両国の閣僚が何人もずらりと一同に会して、スピーチをしあったのである。テレビの画面を見て、ああこれからはいよいよ「G2」、つまり米国と中国で世界をとりしきっていく時代なのだな、と一時は思った。でも考えてみれば、この会議に参加した両国の閣僚は、2日間も他人のスピーチを聞かされて、さぞ退屈しただろうということのほかに、果たしてこれで「G2」時代のスタートなのだと思っていいのかという点が多々ある。
まず、みんながこのごろすっかり目を奪われている中国の経済発展だが、このうちかなりの部分は他ならぬ我々、つまり日本、米国、EU諸国の投資によるものであることを認識しなおすべきだ。そしてASEAN等アジア諸国と中国の経済関係が最近とみに深化して水平分業の度を高めているのに感心する人がいるが、これも実は双方に分布している西側企業の工場間の部品やり取りに由来しているところが大であることに気がつくべきだ。つまり我々は、自分で自分の利益のためにやっていることの影に怯えているのである。
次に、今回の米中閣僚会議をめぐる世界の構図を見るに、米国はすべての同盟国・友好国の利益も代表して発言しているのに対して、中国は裸なのである。つまり米中だけで世界を牛耳るというよりは、中国を周囲の世界に有益な形で取り込む努力が続けられているのだと言えよう。日本は、米国とは安保条約を結んでいるし、中国との間でも非常に緊密な関係にある。自分の立場・利益を両国に常にインプットしていくことで、ジャパン・パッシングを防ぐことができるのだ。他方、米国が経済危機の克服と中近東情勢に注力するあまり、「アジアの問題は、すべて中国に委任」する誘惑に駆られがちであることには十分気をつけていく必要がある 。
APEC首脳会議が2010年日本で、2011年は米国、2012年はロシアのウラジオストクで開かれる。米国がアジアでの集団首脳会議としてAPECを最重要視していることに鑑みると、APECはこれから数年、変動するアジアの政治・経済・安保の未来像を議論・規定する上での主要なフォーラムになる可能性がある。ジャパン・パッシングを防ぐためにも、日本は2010年のAPEC首脳会議を最大限に活用するべきである 。日米同盟関係がこれからも日本の安全保障、アジアの安定維持にとってキー・ファクターとなることは当然だが、日本も大枠の議論を自ら提起していくべきだ。さりとて日本が大枠の問題について真正面から発言してもおそらく相手にされないので、非核、環境問題などを出汁にAPEC域内に緩い議論・調整メカニズムを作る提案などから始めるのがいいだろう 。
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