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2009-07-29 00:00
(連載)人民元は”基軸通貨”になれるか(1)
中岡 望
ジャーナリスト、国際基督教大非常勤講師
最近、中国の存在感が一段と強くなっています。確かにGDPはドイツを抜き、日本に迫っています。しかし、一人当たりのGDPで見れば、依然として発展途上国に変わりはありません。確かに中国経済の高成長には目を見張るものがあります。ただ、どうもメディアは過剰に反応している気がしないでもありません。中国の人民元が米ドルに代わって基軸通貨になるという主張も、そうした例です。単に2兆ドルもの外貨準備を持っているからと言って、人民元が世界の基軸通貨になれるわけではありません。基軸通貨は外貨準備として使われるだけでなく、資産運用としても、貿易決済としても使われるものです。自由で奥行きのある国内の金融市場が存在しない限り、基軸通貨になる資格はありません。中国がドル離れを指向しているのは確かです。中国人民銀行の周小川総裁がSDRに基軸通貨の役割を担わせるべきだと語りましたが、それは人民元がドルに取って代わるべきだと言っているわけではないのです。安定した運用資産が欲しいというだけのことです。以下、人民元の基軸通貨論を分析しました。
中国の国際社会での存在感はますます強くなっている。イタリアのラクイラで開催されたG8で目立ったのは、先進工業国と発展途上国の対立であった。発展途上国を代表する役割を演じたのが中国であった。胡錦濤主席は本会議には欠席したが、それが逆に中国の存在感を示す結果となった。もはや先進工業国だけでは地球温暖化問題や経済危機の解決に目処さえ付けられなくなっていることが再認識された。
胡錦濤主席は、ドルに代わる基軸通貨を作るべきだとG8で主張する準備を行っていた。今は中国の外貨準備は推定で2・2兆ドルに達している。外貨運用の内訳は、米財務省証券が35%、ファニー・メイなどの政府機関が発行する証券が23%、他の米国資産が8%とドル建て資産の比率は、約66%に達している。中国は外貨準備の大半をドル資産に投資しているのである。それだけにドル相場の変動によって中国の外貨準備の価値は大きく変動する。ドル相場はアメリカ政府の政策によって大きな影響を受ける。中国からすれば、アメリカは基軸通貨という特権的な地位を享受しており、それに見合う十分な責任を果たしていないのである。
現在、世界の準備通貨のうち、ドルは65%、ユーロが26%、円とポンドが約2%を占めている。ドルは準備通貨として圧倒的な地位にある。中国は、こうしたドルが基軸通貨の国際金融制度に挑戦し始めているのである。ロシアやインド、ブラジルは中国の主張に同調しており、先進国でもサルコジ仏大統領もG8で記者の質問に答えて、「現在の国際金融制度は時代遅れになっており、新しい制度に取って代わられるべきである」と語っている。胡錦濤主席の突然の欠席で、G8の場でIMFの改革など国際金融制度を巡る本格的な議論は行われなかったが、これからドル基軸通貨制度を巡る議論はますます活発になってくるだろう。(つづく)
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