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2009-07-30 00:00
(連載)「米中関係は世界のどの2国間関係より重要」(2)
高峰 康修
岡崎研究所特別研究員
オバマ政権の安全保障戦略に関して一つ言えることは、中国の急速な軍拡に対してあまりにナイーブすぎるということである。今回の米中「戦略・経済対話」でそれについて全く触れられていないのは、やはり問題である。オバマ政権の安全保障戦略は、テロとの戦いに重きを置き、中国の軍拡という長期的脅威にはあまりウェイトを置いていないように思われる。これは、米中「戦略・経済対話」で「大国同士の競争は今や差し迫った危機ではなく、過激主義者らが21世紀の脅威だ」と明言していることからも明白であるし、米国の2010年度国防予算からも明らかである。2010年度国防予算では、最新鋭ステルス戦闘機F22の調達が打ち切られたり、新しい原子力空母建造が先送りされたり、最新鋭のズムウォルト型駆逐艦の調達が中止された。一方で、対地攻撃能力に優れたマルチロール機F35の開発や無人偵察機の調達などの予算は増額された。これはテロとの戦いを重視していることを示している。
このことは、中国の軍拡を切実な脅威であると感じているアジア太平洋における米国の同盟国の認識との間にズレを生じさせる可能性がある。例えば、オーストラリアは、4月に海軍力と空軍力を大幅に増強することを謳った国防白書を発表している。日本も、中国を念頭に島嶼防衛に力を入れ始めた。オバマ政権が中国の軍拡にいささか無頓着であるのは好ましいことではない。
しからば、我が国の今後の同盟政策はどうあるべきかと言えば、ミサイル防衛(MD)の共同推進を加速し、7月に決まった核の傘に関する日米間の定期協議を進め、合意済みの米軍再編に積極的に協力し、テロとの戦いでも可能な限りの協力をするなど、着実に日米同盟の実効性を高めていくしかないであろう。また、脅威を共有するオーストラリアとは2プラス2を持つ関係であり、日米豪の閣僚級の安保協議の場もある。このような場を通じて、中国の軍拡に対する日豪の懸念を米側に伝えるべきであろう。そして、最も重要なことは、集団的自衛権の行使を認めて、日米同盟の双務性を高めることである。3月には国防総省の2009年版の「中国の軍事力」に関する年次報告書が議会に提出されたが、その中では中国の軍拡が地域バランスをゆるがすとして、中国の海軍力増強、核兵器近代化、宇宙空間への積極進出、サイバー戦能力向上などに懸念を示している。オバマ政権の外交は八方美人的だが、米国防総省が正しく中国の脅威を認識していることも間違いない事実である。
「日米同盟が世界で最も重要な同盟関係」であり、米中関係の親疎に関わらず、日米同盟を維持することが、予見しうる将来にわたってアジア太平洋地域の平和と安定のカギであることに何ら変わりはない。よって、日米同盟をアジア太平洋地域の平和と安全を担保する国際公共財であると位置づける立場から、日米同盟の重要性を認識する両国の人士が協力して、日米同盟強化に寄与することが肝要である。(おわり)
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