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2009-08-17 00:00
クリントン元大統領の北朝鮮訪問の意味
坂本 正弘
日本戦略研究フォーラム副理事長
クリントン元大統領の突然の北朝鮮訪問は、アメリカの意図がどこにあるのかを改めて考えさせられる事件であった。確かに抑留されている2人のジャナリストの釈放は多くのアメリカ人をほっとさせ、オバマ政権の人気を支えた面があったかもしれないが、アメリカが失ったものも小さくないと考える。
第1は、米国の北朝鮮政策の一貫性への疑念である。国連の非難決議が行われ、北の核廃絶を目指して国際的努力の行われているこの時期に(米国は北朝鮮の船舶を追尾)、自ら緊張を放棄し、妥協を目指すとも取れる行動をするのは何故かである。2006年の国連決議後の変身(このときは中国の積極的仲介があった)時もそうだが、緊迫した時に君子豹変し、二国間のルートを作るのは何故かである。かつてのカーター元大統領の訪朝、オルブライト元長官の訪朝、そして今回だが、そこで追求されているアメリカの国益とは、いったい何なのか。
第2に、これによって米国の北朝鮮への強い態度は、張り子のトラではないかの疑問を国際的に生んでいる。金正日書記の笑顔が象徴的だが、少なくとも金正日政権への支持になっただろうし、お土産は何だったのかとも聞きたくなる。中国やロシアの北への援助も非難できにくくなる状況にも注目したい。韓国も現代の首脳を北朝鮮に送って、社員の釈放を実現したが、北を巡る国際環境に少なからぬ影響が感じられる。
第3に、ブッシュ政権と異なり、オバマ政権には国連尊重の気配がみえたが、今回の事態で米国は国連をどの位重要と考えているかを、改めて問わざるを得ない。
第4に、日本の立場だが、2006年秋日本が国連決議を強める動きをしていた時、米国は君子豹変して、二階に上がった日本の梯子をはずした記憶がある。今回も米国は日米韓の団結を説きながらの訪朝であった。畢竟、米国にとって、核拡散は気になるが、核廃絶は及び腰かと批判したくなる。
クリントン訪朝は硬直した米朝関係に風穴をあけたという評価があり、さらに韓国と北朝鮮との話し合いの再開の機運もある。このような状況をどう考えればよいかである。一方において、北朝鮮の6者会談への一時的復帰もあり得るとの観測が可能だが、他方において、それは1990年代以来のこれまでの事態の繰り返しとなる可能性が強く、事態は一層悪化するだけだとの観測も可能だ。新しい駐日米大使の着任が近くあり、日本は総選挙であるが、日米韓が上記の諸問題を踏まえ、本年秋以降の北朝鮮への対応に、どのような合意を形成できるか?時は北朝鮮の核能力増強を利する面もあることを銘記すべきである。
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