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2009-08-28 00:00
日本のみの温室効果ガス削減約束は、むしろ逆効果
玉木洋
大学教授
地球温暖化問題の深刻さがますます明らかになる中、全世界で大幅な温室効果ガスの削減を早急に進めることは、必須となっている。2050年に半減どころか、さらに高い目標に向けて取り組みを進めることは、将来世代への現世代の責任であるだけでなく、現世代が生きている間にも拡大する温暖化被害を軽減するためにも必要なことである。しかし、それと日本が対外的に大幅な具体的削減目標を掲げ、それを無条件で国際約束とすることが良いことであるかどうかは、別問題である。
「世界全体で減らさなければならないから、日本が率先して」という主張は、美しいがナイーブである。2020年の中期目標を大幅なものとして国際約束にし、それが議定書上の法的義務などになった際に、もし日本のみに実質的に厳しい義務が課されれば、日本の経済社会にとっての損失というだけではなく、そもそも世界全体の温室効果ガスの削減を遅らせかねない。なぜなら、例えば今言われているような国別総量の削減でいけば、日本での対策は限界削減費用がきわめて高いものとなり、CO2高排出産業のシェア(及び絶対量)がより効率の悪い外国に移っていく大きな要因となるからである。日本がどんどん高い技術を産みだし、それを利用して産業経済活動を行っていくことは、より効率よく世界全体の温室効果ガスの排出を削減するためにも必要である。
そして、もちろん大幅な削減を日本が行おうとすれば、その対策費用は膨大(経産省試算で190兆円とも)となる。その負担に耐えることは相当困難なことであり、またその負担は環境分野での経済発展でまかないうるというものでもなかろう。このままいくと、新興国の温室効果ガス排出量が激増する中で、世界全体での日本の温室効果ガス排出シェアはやがて3%そして2%と下がっていく。その日本が効率の良い生産のシェアを減少させて、世界全体でいえばコンマ以下のパーセントにしか相当しない温室効果ガスの削減のために、死ぬほど苦労をしても、その温暖化対策上の効果は大きくはならない。
途上国、新興国、アメリカ等の現在義務を負っていない国々を含めて主要な排出国すべてが、実質的な不平等が少ない形で義務を負うこととなることを条件にするのでなければ、安易に高い目標で日本自らをしばることは、むしろ世界のためにもよくないのではないか。「地球温暖化のためなら、日本は最大の努力をすべきだ」ということは正しい。しかし、単に日本がより厳しい目標を立てれば良いというものではない。冷静な議論が必要であろう。
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