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2009-09-02 00:00
民主党政権移行の混乱模様は藤村の「夜明け前」に酷似
山田 禎介
国際問題ジャーナリスト
オーストラリアの主要紙「The Australian」で、外交専門記者が日本の総選挙結果は自国にも大いに影響をもたらすと分析し、「明治維新や戦後経済復興期に匹敵する重要な転換点を迎えた」と伝えている。それは政治のシフト換えを進めるアジアの経済大国日本との共存という国家利益を早速皮算用する姿でもある。こうしたオーストラリア人の発想は、現地社会で何度も経験した。だがそれを割り引いても、南半球から「明治維新」を指摘したことには別の意味で共感したい。
というのは、現在の自民党政権から民主党政権への移行の混乱模様が、まさに明治維新のある局面、それも意外なことに島崎藤村の「夜明け前」の描写に酷似しているからだ。幕藩体制から明治の”御一新”の過渡期、藤村が描いたのが、参勤交代の中断、関所の崩壊など、主要街道の要所の混乱する世界だった。世の情報がまったくなく右往左往する民衆、それに武士の姿がそこにはある。同様にいま、民主党政権誕生を前に、それを取り巻く世界はかなり混乱・混迷している。アメリカにならった「政権移行チーム」構想は雲散霧消か。国家戦略局設置にも難題が噴出し、さらには民主党が利口な霞が関の官僚軍団を”調教”できるかとか、かまびすしい意見が新聞紙面、テレビ画面をにぎわす。でも、それも無理はない。オーストラリアからの指摘のごとく「重要な転換点」の事件なのだから。
筆者は新聞社現役時代に、自民党担当の「平河クラブ記者」が肩で風を切っていたのをよく見た。また彼らのOBの多くが政治評論の世界を牛耳る。いま民主党政権を見るその意見のなかには、自民党と同根との印象がぬぐえない人もいる。そうした意見だけでなく、現役記者に依然残る”平河史観”での「民主党へのダメだし」が続いているのが現状ではないか。
実際には明治維新は、民主党政権誕生の今とは比較にならない「革命」である。その革命は、多くの混乱を乗り越え実際には成果を収めたが、結果として”富国強兵”路線へ慢心を重ねた。そして諸外国との付き合い方は軍事優先で学び忘れ、外交感覚欠如により失敗を重ね、オーストラリア紙のいう戦後経済復興までの長い苦難の道のりを重ね、今日となった。もちろん、今回の民主党の勝因は「明治維新や戦後経済復興期に匹敵」なんて大げさなものではなく、国民が自民にお灸をすえた、いわば刹那的な傾向でしかないとみる識者もいることは忘れてはならない。仮にそれが当たっているとすれば、逆に明日には民主党も“賊軍”になりかねないのだから、さらに油断なくことに当たらねばなるまい。一票を投じた多くの国民も、高みの見物ではなく、政治を国民の手に取り戻したという民主党の姿を今後も見守っていかなければなるまい。
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