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2009-09-06 00:00
(連載)温室効果ガス削減目標の設定は慎重に対応せよ(1)
高峰 康修
岡崎研究所特別研究員
先の総選挙で大勝した民主党は、2020年までの我が国の温室効果ガス削減目標として、1990年比でマイナス25%(2005年比では30%)という極めて厳しい中期目標を、政権公約として掲げている。自公政権による中期目標は、2020年に2005年比で15%削減(1990年を基準にすればマイナス8%)というものであり、これと比べていかに厳しいか明白である。両者によってもたらされる国民負担は、経済産業省がそれぞれ次のように試算している。民主案では、家電や車などを強制的に最新の省エネタイプのものに買い替えさせたり、電力会社に再生可能エネルギーをすべて購入させるなどの必要があり、1世帯当たり年36万円の負担増になる。他方、自公政権の中期目標では1世帯当たり年7万7000円の負担増である。
ただ、自公政権の中期目標は、純粋な国内努力(いわゆる「真水」)によって達成する分を示したものであるのに対して、民主党案はそのあたりが今一つ明確ではないので、上記の比較には不確定性があると思われる。それでも、民主党案が「無謀な目標」であることには変わりない。民主党案に対しては、経団連を中心として産業への打撃を懸念する声がわき起こっている。産業界が温室効果ガス削減に過剰に抵抗するのは、今後は環境技術を基軸に経済成長を目指すべきだという時代にあって、いささか時代の潮流と一致しない動きであるようにも見えるが、行き過ぎた削減目標が有害であるというのも確かな事実である。したがって、民主党案には反対するのは、これは当然のことである。
民主党は、我が国が厳しい削減目標という模範を示すことにより、主要排出国である中国などの新興国や米国を温室効果ガス削減の国際的な枠組みに引き込むことができると考えているようである。しかし、中国や米国等を国際的枠組みに引き込むことができなければ、日本の製造業は生き残りのため排出規制の緩い(または無い)新興国に流れ、国内産業の空洞化が進むおそれがある。これは国内の雇用情勢を悪化させることになり、環境技術などの新しい産業が発展する以前に、日本経済を負のスパイラルに引きずり込むおそれがある。
鳩山由紀夫「次期首相」は、9月22日にニューヨークで開かれる国連気候変動ハイレベル会合の開会式に出席する予定である。この場で、鳩山氏が「2020年に1990年比25%削減」を明言するか否かに注目が集まっている。もし明言してしまえば、間違いなく「それが日本の国際公約だ」という共通認識が国際社会の間で、あっというまに出来上がってしまう。これは何としても避けなければならない事態である。といって、我が国の中期目標を具体的な数字として表明しないことも許されるとは思われない。(つづく)
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