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2009-09-14 00:00
「理系内閣出現」の報道は、皮相・浅薄な分析
吉田 康彦
大阪経済法科大学客員教授
鳩山次期首相が東大工学部卒業後、スタンフォード大学工学部に留学するなど理科系出身、副総理で入閣予定の菅直人代表代行も東工大卒、官房長官就任予定の平野博文氏も中央大学理工学部卒、というわけで、戦後初の「本格的理系内閣の出現に注目」という記事が新聞各紙を賑わしているが、いかにも学歴社会らしい皮相的で、浅薄な分析記事だ。
政治家を志し、功成り名遂げた人物が、出身大学の専攻が理系か文系かで発想が異なり、行動が違ってくるとは思われない。所詮は大学進学後の専攻別分類に過ぎず、彼らは高校卒業まではおそらく万遍なく、ほぼすべての科目で優秀な成績を収めていたに違いない。論理的な思考能力や分析力が求められる点で、理系か文系かに根本的な違いはない。
文系でも法学・政治学・経済学などの社会科学の方法論は、自然科学のアプローチと変わるところはない。鳩山氏のスタンフォード時代の学友だった村上征勝同志社大学教授は「理系的な思考があれば、足りないデータが何か、どうすれば改善できるか、複雑に絡み合った問題を整理できる」(読売新聞)と述べているが、そんなことは「理系的な思考」に限られるわけではない。
鳩山氏は「政治に愛を」と訴え、「友愛の政治」を説くなど、およそ理系人間らしくない文学青年のようなロマンチックなキーワードを乱発しているではないか。政治家に求められる資質はリーダーシップ(指導力)、行動力、説得力、そのための雄弁術で、大学の専攻分野など無関係だ。たしかに、サッチャー元英首相、メルケル独首相、胡錦涛中国主席、温家宝同首相など、諸外国には理系出身の指導者が少なくないが、本国では専攻分野などほとんど問題にされない。政治家としての適性、手腕とは無関係だからだ。
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