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2009-09-28 00:00
(連載)鳩山・メドベージェフ首脳会談―幻想を抱くな(2)
袴田 茂樹
青山学院大学教授
鳩山新政権もマスコミも、領土問題の早急な進展に幻想を抱くべきではない。これは、鳩山政権で最も懸念されることでもある。というのは、鳩山首相は、領土問題に半年から1年で解決の道筋を付けると、およそ現実を無視した言葉を述べているからだ。読売の「論点」で私が指摘しているように、ロシア国内の情勢を客観的に見ると、現在、領土問題解決の「機会の窓が開いている」とはとても言えない。鳩山氏の発言は、客観的な情勢の分析を無視した、単なる楽天的な願望に過ぎない。この発言に対しては、ロシア側もおよそ非現実的なこととして、冷ややかに見ている。
ロシア側が日露関係で現在最も心配していることは、経済関係だけが進んでいることに日本側が不信感を抱き始めたことだ。ロシアとしては、経済関係さえ発展すれば良いことで、平和条約問題はできるだけ避けたい。しかし、7月の麻生・メドベージェフ首脳会談で麻生首相が、平和条約の進展がなければアジア太平洋地域におけるパートナー関係を構築できない、と述べたことに神経をとがらせている。そこで、メドベージェフの一見前向きの発言は、日本側のこの不信を払拭し平和条約問題を進展させるポーズを示すためのものと理解できる。しかし、実際には単なるポーズに終わり、独創的アプローチの具体的な内容は何も示されてない。またもや馬の前の「人参」である。そろそろ日本政府は、お人好しを脱却するときだ。もう一度強調するが、鳩山政権もマスコミも、近い将来の領土問題解決について、幻想を抱くべきではない。ロシア状況は、それほど甘くはない。
別の件であるが、9月24日の産経新聞に、衆議院の外交委員長に就任した鈴木宗男氏が、一方で4島返還論を述べながら、同時に「まず2島を返してもらい、残りの2島で日露両国が経済協力や共同統治をして交渉を続けるなど、いろいろなやり方ができます」と述べている。これは彼の持論の、いわゆる「段階論」あるじは「2島先行論」である。まず2島を返してもらう、と言うが、これは日ソ共同宣言を基礎にする以外、考えられない。しかし、同宣言によると、ロシアが平和条約なしで、あるいは中間条約的なものでまず2島を返すはずがない。ロシアが平和条約なしで2島返還するというのであれば、私は2島先行論、段階論に大賛成であるが、論理的にも現実的にも、あり得ないことである。2島のために平和条約を締結し、その条約あるいは付随文書に残り2島の継続協議を謳ったとしても、いったん平和条約を締結した以上、ロシアがその後真剣に国後、択捉の返還交渉をするわけがない。また、共同統治もきわめて非現実的である。
外交交渉、特に領土問題は、主権に関わる真剣勝負の交渉だ。政府もマスコミも政治家も、客観的な現実認識を無視した幻想を振りまくべきではない。(おわり)
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