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2006-05-16 00:00
戦間期の宥和主義の愚から学ぶべし
加藤 泰
大学教員
吉田春樹氏が指摘されるように、確かに時代概念を正確に把握できるかどうかは、情勢判断の前提だと思います。たとえば1945年8月15日以後も「時代は変わった」と認識できず、それ以前と同じだと思っている日本人がいたとしましょう。かれが軍人とか華族とかの戦前の特権階級で、引き続き戦前と同じように振舞いつづけたとすれば、それは悲劇的ですらあります。世間からはたぶん狂人扱いされ、何をやっても上手くゆかないでしょう。
ところで、世紀を跨いだ「11・9(ベルリンの壁の崩壊)から9・11(同時多発テロ事件)まで」の時代はちょうど1920年代の「戦間期」のような時代だったと思います。「冷戦期とポスト・ポスト冷戦期」の狭間のユーフォリア(根拠のない楽天主義)は、まさに「第一次大戦と第二次大戦の間」のユーフォリアを想起させるからです。1990年に全欧安保首脳会議の出した「永久平和が到来した」というパリ憲章のユーフォリアは1928年の不戦条約のメッセージと同じ破られるための約束でした。
さて、そこでユーフォリアの後は何が来たか、来るのか、が問われているということでしょう。戦間期のユーフォリアはナチス・ドイツの登場によって打ち破られました。ポスト冷戦期のユーフォリアはイスラム原理主義テロリストの登場によって打ちのめされました。戦間期の世界はナチス・ドイツの登場を宥和主義によって迎え、第二次大戦の悲劇を不可避にしました。いまポスト・ポスト冷戦期を迎えた世界はテロリズムの脅威とどのように向き合っているでしょうか。正面から対決したアメリカを支えるのではなく、口をそろえてアメリカを批判、非難しているのが実態ではないでしょうか。
アメリカの対テロリズムの戦いを支援するのではなく、むしろアメリカの脚を引っ張ることによって漁夫の利を得ようとするかのような動きが、ロシア、中国、フランス、ドイツなどに見られます。吉田氏の指摘される「ポスト・ポスト冷戦時代=新しい国際緊張の台頭」は9・11のテロリズムによって触発されたとはいえ、むしろ実態においては「ロシア、中国、フランス、ドイツなどの動き」によってもたらされている面があるのではないでしょうか。いまこそ戦間期の宥和主義の愚から学ぶべきときだと思います。
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