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2009-10-16 00:00
(連載)「東アジア共同体」構想に対する米国の懸念(2)
高峰 康修
岡崎研究所特別研究員
鳩山首相の「米国依存からの脱却」に関する発想も正しくない。なぜ、米国依存を改めるのに、二者択一的に「アジア重視」となるのか。米国依存を改める根本的な解決策は、日米同盟をより双務的にすることであり、その柱は集団的自衛権の行使容認と、自主防衛努力の強化である。「米国への従属」と受け取れないこともない現在の状況を改善するには、そうすればよいだけの話であって、「アジア重視」など持ち出してくる必要など全くないのである。
おそらく、鳩山氏が夢想するような「東アジア共同体」構想は実現することがないであろう。アジア太平洋地域の民主主義国家群は、強大な独裁・軍事国家である中国へのカウンター・バランスとしての「米国抜きの共同体」が危険なものであるということを知っているからである。また、中国も、鳩山氏が提唱するような形の「東アジア共同体」構想には、本心では積極的ではないが、日米の離間に役立つという深謀遠慮に基づいて、お付き合いしているに過ぎない。
米国を含む緩やかで開かれた経済・環境・エネルギーなどに関する東アジア共同体(より正確には「アジア太平洋共同体」というべきであろう)は、無謀な政治的統合を目指さない限りにおいて、必ずしも間違ったものではない。しかし、鳩山首相以下、閣僚らの非常識な発言のせいで、「東アジア共同体」という言葉自体に「米国排除」というイメージが色濃く付きまとうことになった。したがって、「東アジア共同体」という言葉は一旦お蔵入りさせるべきである。これ以上、米国抜きの「東アジア共同体」構想に言及すると、日米関係は本当に危険水域に入ってしまう。
そこで、鳩山首相が今後直ちになすべきことは、「日米同盟重視」であることを繰り返し表明するとともに、実際に態度で示すことにより、米国の懸念と不信を払拭することである。これをやらなければ、日米関係が悪化して日本の安全を危うくするばかりでなく、アジア太平洋で米国との密接な関係を結ぶことにより自国の安全を高めようとしているオーストラリアや韓国やインド、さらにはASEAN諸国にも相手にされなくなるであろう。これが、日本にとって大きな損失であることは言うまでもない。アジア太平洋地域で、何らかの共同体にどうしてもこだわりたければ、関係各国にとって最も抵抗感や弊害がないのはAPECの強化ということになろう。そこから地道に各分野での協力関係を築き上げていくのが、遠回りだが現実的である。(おわり)
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