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2009-10-28 00:00
大蔵OBの郵政社長任命という愚策
入山 映
サイバー大学客員教授・(財)国際開発センター研究顧問
郵政の新社長は大蔵OBだという。元官僚であれ、なかれ、有能な人材が活用されるのは結構な話だし、税金をムダ遣いする外郭団体への「天下り」と同列に論じるのは、もちろん当たるまい。第一、金融界から民間のエースとして登場した社長を、姑の嫁いびりよろしく、目ひき袖引きも同然の扱いで辞任に追い込んだ後では、民間人に委嘱してみても受け手はないだろう。しかし、この人事にはどうしようもない違和感と失望感がある。
第一には、民主党政権が掲げた「脱官僚」あるいは「政官財癒着構造からの脱皮」との関わりだ。脱官僚とか、癒着根絶というとき、問題にされているのは、さまざまな意思決定のプロセスにかかわる個々人の資質とか、能力ではない。個人の意図とか善意・悪意にかかわりなく、制度として、システムとして、耐用命数が尽きた、腐食の度合いがどうしようもないところまできた、ということだ。だから、数ある実例の中から例外的にこれはよい、一概に悪いとは言えないではないか、というケースをあげつらってみても、制度擁護には連ならない。正体見たり枯れ尾花ではないが、勇ましい金看板の中味はそんな程度のものだったのか、という失望感に近いだろう。
第二に、郵政社長というさまざまな意味で日本の代表的な企業トップの人事が持つ、イメージとか、シンボルという機能に対する無神経さというか、むしろ知らない筈はないだろうに、知ってやっているのなら中味を疑いたくなる、という点だ。前回選挙の地滑り的大勝にしても、民主党のマニフェストを丹念に読んだ有権者が多数の支持を与えたというより、自民党にだけは続けさせたくないという「これだけは避けたい」結果だった、というのが当たっているように思う。イメージの優劣、あるいは負の選択肢を避ける、という典型のような選挙で誕生した政権が、これほど旧体質の尻尾を引きずったイメージを敢えて選ぶ感覚を疑う。なんだ、所詮はそんな程度なのか、という失望感だ。
そして第三に、今回の一連の騒ぎが亀井大臣主導の下に行われたという印象を与えている点だ。そもそも員数合わせに近い「連立」については疑義があることについては、先にも触れたから繰り返さないし、亀井氏の政治スタイルについても、毀誉褒貶を改めて論ずるつもりはない。しかし、旧い旧い政治体質を感じさせる一面を彼が持っていることは争えない。もっともその点では小沢一郎氏も同じだから、いまさら、ということかもはしれない。鳩山さんがしたたかで、旧体質と妥協の止むなきに至った時には、悪役として亀井氏に責任をおっかぶせるくらいの芸当が出来るのなら、それはそれで政治なのだろうが、どうもそうでもなさそうだ。民主党の抱える硬直的労働組合体質の上に、守旧派的体質が存外大きいのでは、と思わせかねない、ということだ。これを要するに、郵政社長への大蔵OB起用は、愚策であるに留まらず、この政権に取って破壊的な要素になる可能性さえある、ということだ。第二・第三の愚策が登場しないことを祈りたい。
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