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2009-11-09 00:00
(連載)鳩山政権成立に歴史的意義ありや?(2)
吉田 重信
元駐ネパール大使、元駐上海総領事
一方、わが国の歴代政権は、戦前には望んでも得られなかった米国市場とのより自由な物と人の交流の機会を存分に活用して、経済発展をはかり、大きな成果を挙げた。言い換えれば、戦後日本は、敗戦という運命に逆らうことなく、そのなかでうまく対応し、世界史上も稀な「敗戦国の発展、繁栄」という成果を挙げたのである。この点、イラクの現状とはまったく違う。ところが、ここ十年来、わが国の内外情勢に大きな変化が生じ、わが国としても調整を要する問題が多く出てきた。対外関係では、米国が一国覇権主義の行き詰まりとその経済の破たんに起因して、多極主義を求めざるを得ない現状となり、またこれに対するがごとき中国の台頭と発言力の増大の動きが出てきた。
国内面では、経済の成熟に伴う成長率の鈍化にいかに対処するか、また今後経済的規模の拡大が望めない中での社会的資源の再配分をどうするか、などの問題が深刻化した。これらの内外の情勢変化に即した問題解決策を、自民党政権は見出すことができなかった。そこで、国民は代案を求めて民主党政権を選択したのである。今回の政権交代の最大の意義は、それが、選挙の結果により国民の意向が反映されたことにある。昨年秋の米国の大統領選挙における「変革への波」が日本にも押し寄せてきたともいえる。鳩山首相自身が述べているように「民主党はオバマの勝利に助けられた」のである。
「変革」が国民の意向で促されたことは、わが国政治史において画期的なことである。これまで、西欧諸国の言論界、たとえば英国の『エコノミスト』誌やオランダのヴァン・ヴォルヘレンなどは、日本の経済的成果は評価しても、政治状況については、「見かけだけの民主主義」と馬鹿にしてきた。今や西欧の言論界も、今回の日本の動向をみて内心驚き、今後少なくとも「日本の民主主義は機能していない」などとケチを付けることはできなくなった。筆者の知っている中国や韓国の有識者たちは、今回の日本の政権交代を称賛しているようにみえる。中国や北朝鮮の指導者たちに至っては、日本の民意発揚の動きが波及しないか、警戒しているに違いない。したがって、今回の日本の政権交代は、少なくともわが国の対外イメージの改善に大きく貢献している。これはアメリカの世論や言論界の対日評価においても同じであろう。
しかし、民主党新政権が抱える問題は、その性質上一筋縄では解決できない類いの問題ばかりである。要するに、どの政党が担当しても、簡単には対処できない問題なのである。一部の学者や言論人が提案するような妙案が見つかるはずがない。経済が発展し、社会が成熟しつつある国家が抱える問題は、いずれも、複雑な利害調整を要する問題であり、試行錯誤の過程を経ながら解決を求めていくほかない。これは、今日の米欧諸国の抱えている諸問題や政治状況と比較すれば、納得がいく。目下オバマが掲げる医療保険制度改革も、米国が日本に比べ遅れてさえいることを示している。そういう意味で、日本と欧米は、抱える問題の性質とその解決困難さにおいては、似たような状況にある。(つづく)
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