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2009-11-09 00:00
米国排除の「東アジア共同体」構想を拒否する米国
鍋嶋 敬三
評論家
アジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議が11月14日にシンガポールでオバマ米大統領も参加して開かれる。鳩山由紀夫首相が提唱する「東アジア共同体」構想は、10月下旬の東南アジア諸国連合(ASEAN)関係の首脳会議や東アジア・サミットで、地域共同体の枠組み構築に向けて議論を続けることでは一致したが、参加国など具体的なイメージは何も固まっていない。岡田克也外相が10月上旬、米国を東アジア共同体に含めない旨発言し、鳩山政権の姿勢に対する米国の疑念を深めるのに一役買ったが、この地域の経済統合に関する米国の考え方ははっきりしている。それは「アジア太平洋における経済統合の強化のうえで、米国がリーダーであり続ける」「効果的な地域の経済機構は、太平洋の両側の国々を含まなければならない」(トンAPEC米代表代理)ということである。
米国のアジア政策にとって、同盟国の日本と大国として興隆し経済関係でもますます重要になりつつある中国との間の「バランス」を取ることが、最大の課題である。ブッシュ(父)大統領の国家安全保障担当補佐官を務めたスコウクロフト氏は、「米国の存在無しには、アジア諸国は、日本か、中国か、どちらかの選択を迫られるように感じる。このようなことは誰も望んでいない」と述べている。さらにASEAN、オーストラリア、インドを含めたアジア地域では「米国が地域を安定させる存在なのだ」と言い切っている。日中対立で波が立ちかねないアジア太平洋地域の「安定装置」としての米国の指導的役割への自負がうかがえる。
アジア太平洋への関与について、米国のこだわりは強い。第一に米国にとっての戦略的重要性であり、それを追求する場がAPECである。トン氏は言う。「経済やその他の重要な利益に関して多国間で関与する主要な場だからである」(下院外交委員会小委での証言)。APECの位置付けについてカトラー米通商代表部代表補は明快だ。「米国が参加するアジア太平洋で唯一の地域経済グループである」「それ故に地域の貿易、投資問題で、米国がリーダーシップを発揮する唯一の機構である」(同小委での証言)。
ASEAN+3(日中韓)、これに豪州、インド、ニュージーランドを加えた東アジア・サミットのような「アジア中心の機構は、地域の経済構造進化のため完全に参加しようとする米国の能力を減殺する」と、同代表補は米国排除の論理としてはねつけた。鳩山首相がASEANなどの首脳会議で日本外交の柱として訴えた「日米同盟が日本外交の基盤」と「東アジア共同体」構想がどのように関連づけられるのか不明のままでは、米国にも、アジア諸国にも、説得力を持ち得ないのである。
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