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2009-11-17 00:00
(連載)全米で巻き返す保守派の「茶会」運動(1)
中岡 望
ジャーナリスト、国際基督教大非常勤講師
オバマ政権が発足して10ヶ月、大統領選挙直後の高揚感は現実の前に次第に薄れつつある。オバマ大統領は政治的な対立を超克し、超党派による新しいアメリカの実現を訴えたが、共和党はことごとくオバマ政権の政策に異を唱え、党派的な対立は一層深刻化している。ワシントン・ポスト紙とABCの共同世論調査では、政権発足当初のオバマ大統領の支持率は68%と極めて高水準であったが、10月18日に発表された最近時点の調査では支持率は57%にまで低下している。リベラル派の評論家サム・タネンハウスは、オバマ政権発足直後に『保守主義の死』と題する本を出版し、新しいリベラルの時代の到来を議論している。しかし、死んだはずの保守派がゾンビのごとく蘇りつつある。それも従来の共和党という枠組みとは別のグラスルーツ運動として勢いを得つつある。
アメリカの納税期限の4月15日に全国主要都市で「増税反対」「大きな政府反対」「反オバマ」を旗印に大規模なデモが行われた。ある推計では350都市で320万人が参加したとの報道もある。同日に行われたラスムーセンの世論調査では、デモを支持すると答えた比率は51%に達している。その後も大規模なデモが行われ、9月12日にワシントンで行われたデモは、首都で行われた保守派のデモとして史上最大規模を記録している。こうした一連の保守派の動きは、「茶会運動」と呼ばれている。アメリカの独立戦争のキッカケとなったのは1977年の「ボストン茶会事件」であるが、そのことに引っかけた命名である。
フランスとの7年にわたる戦争で財政的に疲弊していたイギリス政府は、「印紙条例」などを導入して植民地から税収を得ようとした。1773年にイギリス東インド会社にアメリカでの茶の独占販売権を与えたことで、イギリスと植民地アメリカの対立は一気に高まった。ボストン湾に停泊中の東インド会社の船の積み荷の茶を海に投げ捨てたことをキッカケに、アメリカは独立に向けて動き始めた。今、アメリカで盛り上がっている増税に反対する「茶会運動」は、増税に反対したボストン茶会事件から名付けられたものである。最初に茶会という言葉を使ったのは2007年の共和党大統領予備選挙に立候補したロン・ポール上院議員である。同議員は“Tea Party 07. com”というウエブサイトを開設して、ボストン茶会事件232周年を祝う集会の開催を訴えた。
さらに2009年2月10日には、保守派の活動家メアリー・ラコヴィックが「オバマ政権は社会主義を推進している」とオバマ批判を展開。保守派のテレビ局フォックスニュースの番組に招かれ、オバマ政権の景気刺激策を批判した。さらに2月19日、CNBCのコメンテーターのリック・サンテリが番組の中でオバマ政権の住宅政策批判を展開し、新サイト“Chicago Tea Party. com”が開設された。こうして始まった茶会運動は一気に全米に広がり、4月15日の全国規模のデモへと発展していった。一連の大規模なデモに加えて、オバマ政権が医療保険制度改革を進めるために開催したタウンミーティングにティーバッガーと呼ばれる同運動の参加者が乱入し、メディアで大きく報道され、共和党惨敗で意気消沈していた保守層にアピールした。(つづく)
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