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2009-11-18 00:00
仕分け人による判断で技術立国の基礎を脅かして良いか
玉木洋
大学教授
鳩山政権による事業仕分けが進んでいる。掲げた看板「無駄遣いの排除」はすばらしい。公開で行うのも斬新である。しかし、「議論が短時間過ぎる」、「実態が分かっているのか」、「人民裁判」、「仕分け人の責任と権限は何なのか」、「財務省主導」、「財源確保のために、必要なものも切っている」といった批判も噴出している。
筆者もこの事業仕分けには疑問を持つところがある。スーパーコンピューター、ロケットエンジン等々の重要な科学技術開発の基礎、すなわち今後の日本の経済や国民生活を支える基礎となるような重要な予算が軒並み厳しく削減されている。審議会であれば、多少人選に偏りがあったとしても、ある程度公平な専門家が長時間の議論の末、何らかの説明のつく結論を出すものである。その審議会が隠れ蓑といわれてきたが、仕分け人は専門的知見もなく、一方的な態度で強権的に削減判断を出していく。
軍事的にも、資源的にも力の弱い我が国は、科学技術立国の方針で国を建てていかなければ将来衰亡するのは明らかであろう。子育て手当の財源も、科学技術の基礎に支えられた経済力があってこそ確保できるのである。高度の技術開発は1-2年の遅れでも命取りになるおそれがある。仕分け人によるパーフォーマンス的な作業は、国家国民の将来を本当に考えた議論を押しつぶしているようにも思える。
子育て手当など目に見えやすい形でのみ「友愛」精神を発揮するのではいけない。選挙で票になる多数の国民に直ちに人気が出にくい政策であっても、反対者が研究者など一部のひとに過ぎなくても、政治・行政の当局者は、国民のより大きな幸せのために、冷静な判断をしなければならない。手続き的にも内容的にも、仕分け人による作業には疑問を呈さざるを得ない。
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