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2009-11-21 00:00
直接民主主義が良いとは限らない
玉木洋
大学教授
日本国憲法は非常に民主的な現代的憲法であるが、その冒頭は「日本国民は正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し」である。憲法に書いてあるから正しいということではないが、ここには(直接民主制ではない)代表民主制を積極的に選択しているという意図を汲み取ることができる。憲法が国民投票を極めて限定的にしか位置づけていないことも、その解釈を支持する要因となりえよう。国家権力は主権者たる国民に由来するものであり、したがってその権限は国民に由来すべきものであるし、国民の利益のために行使されなければならない。国民主権、民主主義とはまさにそういうものである。しかし、国民一人ひとりやその単なる集合が、さまざまの政策について正しい判断をすることが可能であるということを前提とするような国民投票の多用は、現実的ではないのではないだろうか。
個々の国民は、安全や安心や、老後や子育てや、医療などへ多くの給付や、少ない税金や、健全な国家財政や、分かりやすい政治を望む、ということではたいてい共通である。しかし、それらすべてを完全に満足させる政策はないのであって、個々の争点ごとに国民投票を行ったとすれば、全体としては破綻するような政策選択が行われる可能性は非常に高い。例えば消費税が争点になった選挙では、事実上消費税についての国民投票が行われて消費税が否定された、ということがあった。これが政策についての国民投票であったとすれば、より一層はっきりと消費税は否定されたであろう。しかし、今日、消費税がなかったほうが良かったとか、廃止しようという議論が、どれほどあるだろうか。
国家、国民の大局、長期的な将来を展望し、甘いことだけでなく、苦いことも、責任をもって考えられるような、有能で信頼される選良が、冷静に検討して、正しい政策を選んでいくということの方が、国民のためになるという面があるのではないだろうか。もちろん、国民の価値観によって選択すべきテーマもある。しかし、そういう政策案件が多数ということもなかろう。選挙による民主政治が行われている以上、代表制民主主義であっても、代表者(国会議員)は既に国民の日々の感覚や意見を十分考慮せざるを得ない状況になっている。「劇場型政治」も、民主党マニフェストや、鳩山政権の政策の内容も、そういう文脈で捉えて、理解しやすいものが大変多くなっているとも言えよう。
今年の総選挙では、民主党が政策全体の整合性はひとまずおいて、多くの主要な争点で国民多数が喜ぶ政策を提示し、国民の多く(投票者の約半数というこれまでにない多数)が民主党に投票した。このことは、民主党が国民の関心や希望をうまく捉えているともいえる一方で、選良による政治であるはずの代表民主主義が既に直接民主主義的問題点を持ち始めてしまったともいえるようにも思われる。そのようなことを考えると、私はむしろ代表民主制を基本として、国民の意見の反映が不足となっている具体的な部分について適切な対応を考えることのほうが、具体的な対策をどのように反映させるかについての工夫をすることのほうが、より重要であると思う。そして、代表者(国会議員)は国家国民の利益を考えつつ、それに迎合することのない政策選択を心がけていくこと(そして必要な説明をすること)が重要なのではないだろうか。
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