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2009-11-29 00:00
事業仕訳による改善点を冷静に考えよう
玉木洋
大学教授
「事業仕分け」について、私はその一部分しか見ていないのではあるが、疑問を感じた点がある。役人の仲間内の不透明な無駄遣いをガラス張りの議論によって削るという点で評価されるべき部分が少しはあったかもしれないが、むしろ、大局や本質を見ずに、わかりやすい効果が見えないというだけで、きわめて簡単な議論によって削った、という面が多かったともいえないだろうか。月刊誌『外交フォーラム』の国費買い上げの件は、比較的無駄の見えやすい件かもしれないが、政府として提供すべき情報、知らせるべき情報の広報のために、まったく無償で、最初から政府の経費で広報資料を作ることもありうるところ、「購入してくれる人も少しはいる」ということで、「有償にしたうえで、政府が買い取る」ことについて、それだけで「まったくおかしい」ということはないようにも思える。
私が一部報道で見たのは都心部の官舎の件についての議論だが、これは、たとえば今日現在でも為替相場の激変で緊急の対処が必要ということもある。もちろん災害もあれば、テロもあるかもしれない。その時に国の中枢部が緊急の対処をしなければいけないのに、1時間も1時間半もかけて通勤するのではなくて、近くに官舎を用意することに合理性がない、と簡単に断言することにも無理があるようにも思える。民間企業でも、工場長は工場にすぐに駆け付けられる場所に社宅を用意するということもあろう。仕訳人の中には、「なぜ公務員だけに官舎が」というような発言をする方もあったが、業務上必要な宿舎については、雇い主が社宅や相当な額の住居手当の支援をするというのは、民間でも特に珍しいことではなかろう。もちろんそういうものがない企業もあることは承知している。
科学技術予算や防衛関係予算についての様々な指摘は典型例であるが、大局観や専門的知識が十分な人たちによって合理的な判断がなされたのかどうかについては、大いに批判もされているところであり、実際今回の仕分け人方式による議論の適切性や判断の内容の合理性については、疑問の余地がないとは言い難いように思える。
このような審査の実体部分に加えて、もちろん、予算案作成権のある内閣でもなければ、その審議・承認権のある国会でもない、仕分人たちが実質的に権限を持つというこの方式自体に、それが憲法上に基づく民主的な政治・行政の方法であるといえるか、という疑義も十分に提起されうると言える。これまでの予算決定過程にわかりにくさなどの問題点があった部分を全く否定するつもりはないが、その反動だからといって、ここまですることが妥当なのか、そしてこれまでよりほんとうに改善になったのかどうか、冷静に判断する必要があるのではないだろうか。
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