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2009-12-21 00:00
(連載)鳩山同盟外交の蹉跌(1)
鍋嶋 敬三
評論家
鳩山由紀夫首相は12月15日、沖縄の普天間海兵隊飛行場の辺野古への移設問題を先送りする決定をし、日米同盟の空洞化を招く危険を冒した。「迅速な」決着を期待していたオバマ米大統領に自ら
\"Trust me\" (信じてほしい)と呼び掛けた首相は、大統領の信頼を裏切った。信頼関係のない同盟は紙切れになる。民主党が総選挙で圧勝する前から指摘しておいたように、日米同盟を揺るがす懸念が、現実のものとなった。鳩山外交の失敗は対米関係にとどまらず、影響が広がるだろう。中国にとっては、日米の対立は漁夫の利である。北朝鮮は鳩山内閣の対応を歓迎する声明を出した。核、ミサイル、拉致問題で日米の離間を策してきた北朝鮮にとっては、「棚からぼた餅」だ。日米関係がぎくしゃくし、両政府間の意思疎通も不十分となれば、6カ国協議に臨む日本の立場は弱まる。北朝鮮の声明はまさにそこを突いている。気候変動問題や国連安全保障理事会の常任理事国入りに同盟国米国の協力が不可欠な時に、日本の外交的損失は計り知れない。
普天間問題で一気に強まった米国の鳩山不信は、民主党政権の対中傾斜によっても増幅されよう。政権の実権者である小沢一郎幹事長率いる大訪中団の故錦濤国家主席への表敬、慣例を無視して実現させた習近平副主席の天皇との会見、と立て続けに中国重視を見せつけた。山岡賢次民主党国会対策委員長は米駐日公使に日米中の3カ国関係は「正三角形の間柄だ」と述べたと伝えられる。日米中は等距離だというが、日米は安保条約に基づいた軍事同盟であり、ともに民主主義国家だ。軍事的な膨張を続ける中国は共産党の独裁政権であり、日米と日中が等しい関係にはなり得ない。中国から見れば「正三角形」は対米、対日外交上もより有利な展開が可能になる。
鳩山内閣はインド洋からの自衛艦の補給活動撤退、辺野古移転の事実上の白紙化、日米地位協定の見直しの方針など、発足後僅か3ヶ月で同盟管理に疑問符を付けた。総選挙のマニフェストでは「北東アジアの非核化を目指す」と公約した。核保有の北朝鮮が米国の核の排除を要求しているが、民主党政権はどのようなプロセスで非核化を実現するのか。防衛計画大綱には日本の安全保障の基本方針として専守防衛と並んで「米国の核抑止力に依存する」と明記してある。非核化で日本の安全保障はどのようにして担保されるのか、説明はない。鳩山内閣は新防衛計画大綱の策定を見送ったが、これは新政権に国家の基本である防衛戦略がないことを物語っている。(つづく)
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