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2009-12-22 00:00
(連載)鳩山同盟外交の蹉跌(2)
鍋嶋 敬三
評論家
普天間問題は日米安保共同宣言(1996年)以来の懸案処理の象徴である。共同宣言で日米安保条約が「21世紀のアジア太平洋地域の安定の基礎」であると「再定義」し、「アメリカの軍事的プレゼンスの維持が地域の安定維持に不可欠」と認めた。2005年には「日米共通の戦略目標」を定め、目標達成のため自衛隊、米軍の役割・任務・能力の検討と日米の兵力態勢の再編の具体策を明示した。これに基づいて2006年「再編実施のためのロードマップ」が策定され、普天間代替施設の建設、海兵隊8000人と家族9000人のグアム移転を「2014年までに」と期限を切ったのである。普天間問題は負担軽減を求める沖縄の要求をぎりぎりのところで日米政府が受け止め、実に10年間におよぶ三つどもえの交渉の末まとまったものであった。
鳩山首相は移転先の決定先送りをルース米駐日大使に伝えた際、記者団に「日米合意の重さは理解」する一方で「沖縄の皆さんの思いを理解」して「辺野古でない地域を模索する」と述べた。それには数ヶ月を要すると言うが、「最後は私が決める」と口癖の首相が決断したのは、「決めないこと」だったのだ。鳩山首相は持論の「常時駐留なき安保」を「今は封印」と語ったが、一方で「他国の軍隊が居続けることが適当かどうか」とも述べた。海兵隊は全部沖縄から出てグアムに行ってもらいたい、というのが本音だろう。そうであるとすれば、日本の安全を守る防衛力と米軍の関係はどうあるべきかについての具体像、それに至るプロセスを明示しなければ、国民の理解は得られず、国家の最高指導者としての資格はない。
外務、防衛閣僚の日米合意に基づく辺野古移転、年内決着の進言を聞き入れなかった鳩山首相に独り善がりの決定をされては、国家の安全が危うくなる。日米首脳間で壊れた信頼関係を100%回復させることは困難だ。首相はその責任を自覚しているのだろうか。故大平正芳首相はちょうど30年前の1979年、総合安全保障政策を立案する研究グループの会合でこう述べた。「わが国が名誉ある生存を確保するためには、自らの安全保障のため、周到かつ総合的な努力を払う必要がある」「総合安全保障は節度ある質の高い防衛力整備と、これを補完する日米安保条約の誠実かつ効果的な運用を図らなければならない」と。鳩山首相はこの言葉をじっくりかみしめてもらいたい。(おわり)
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