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2010-01-17 00:00
二度と鎖国国家にならないことが日本外交の原点
宮崎 厚
ベンチャー企業顧問
当フォーラムの存在を知って、外交というものに関心を持つようになり、本掲示板に時々投稿していますが、新年にかけて、国際外交の本来の意義に関して感じたことを書いてみます。昨年の政権交代によって日米関係を見直すとか、これまでの米国一辺倒をやめて中国をはじめアジア外交を中心にするなどと言われています。また、国内的には、行過ぎた市場主義や弱肉強食の競争社会を改め、地方を中心とした国民目線で格差解消、国家による安心社会の形成などが言われます。私にとって、外交を考える上で昨年最も印象的であったのは、10月の「日経フォーラム」においてファーストリテイリング会長の柳井正氏が「国内で閉じた個人や社会に未来は無い」と述べた言葉です。世の中で経済の閉塞感だの、内向き思考だの、若者が夢をもてないなどと言われる中で、柳井氏の言葉こそ日本外交、日本外務省の目指すべき国際外交の原点ではないかと考えます。
日本国内ではどうしても身の回りのことにとらわれて内向き思考になりやすく、マスコミは視聴率を上げるためには不安を煽り、ほとんどの政党は「安心」を訴えて選挙に勝とうとしています。安心、不安、不平不満、脅威などは社会形成上あまり意味のある言葉ではありません。政治的、外交的には今何が重要であるかを認識し、そのために何をするのかということが意味のあることで、そうした観点から日本の外交にとって最も重要なことは、日本の鎖国化思想をいかにして防ぎ、日本を未来のある国家にするかということだと思います。かつての日本では、生活できないほど貧しかった人々が中南米などに家族をあげて移民して、大変な苦労をされて自らの生活を築き上げたという、想像を絶するような国際化の事例も数多くあります。そうした方々は当時不平不満を言ってる余裕などなかったと思います。しかし、現在の日本において、政治家と官僚はもちろん、大手銀行・証券・損保・生保など金融機関、旧政府系企業やインフラ系企業(郵政、旧電電公社、旧国鉄、電力会社)など日本国内で大きなプレゼンスの集団がグローバルな発想をしているとは思えません。それはJALの例が示しています。国際的航空会社のはずが、全くグローバル化などできていませんでした。
私の気のせいかもしれませんが、日本社会にはどうも江戸時代の鎖国社会の絶頂期である元禄時代への郷愁を忘れられないとの思いがあるのではないでしょうか。文学的には素晴らしい松尾芭蕉の俳句のロマンチックな世界の物思いに浸り、繁栄を満喫していることが一番安心するのではないでしょうか。確かに既得権を守りたい人には鎖国は都合がよく、士農工商の社会階層は固定化し、困ったことはお殿様に頼み、社会は比較的安定して江戸幕府は300年も続きました。ようやく、明治維新が起こり、今ブームの坂本竜馬のような人物が現れ、問題意識と大志を抱き、開国政策がスタートしました。もはや鎖国には戻れません。江戸時代の人口は3000万人程度でほとんど増加しなかったように聞いています。いくら少子化といっても現在1億2000万人です。たとえ人口減があっても3000万人にまで減るなんてことは誰も望んでいませんし、当分ありえません。坂本竜馬は過去の人であり、今では文学やドラマの世界にしか存在しません。政治や外交はこれからの現実世界の問題であり、今後どうするかということであり、夢や希望を持ちたいならば、閉じた社会に未来は無いということをはっきりと認識すべきです。
日本を閉じた社会にしないために、日本人が常に開かれたグローバルな発想で新しいことを創造し、未来のある国家を実現してゆくために、外交政策の根本原理は、日本を二度と鎖国国家にはしないことではないかと年の始めに考えました。
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