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2010-02-12 00:00
(連載)問題のある「日中歴史共同研究委員会」報告書(1)
高峰 康修
岡崎研究所特別研究員
日中両国の有識者による「日中歴史共同研究委員会」(日本側座長=北岡伸一・東大教授、中国側座長=歩平・社会科学院近代史研究所長)が1月31日に報告書を発表した。この、日中歴史共同研究委員会は、安倍晋三首相と胡錦涛国家主席との間で、両国の有識者が歴史の共同研究をおこなうことを通じて日中友好を深めることで合意したのを受けて、設置されたもので、古代から近現代にわたる日中の歴史に関して共同研究が行なわれてきた。
日本側には、真摯に歴史に向き合いたいという純粋にアカデミックな動機から参加した有識者も少なくないのではないかと察する。しかしながら、そのような方々には申し訳ないが、「日本と中国による歴史共同研究に大きな意義を認めることは困難だ」と言わざるを得ない。そのような結果に終わることは、始まる前から目に見えていることであった。それは、学問を共産党支配の道具とみなすような中国の体制と、学問の自由が認められた民主国家である我が国とでは、共通の土俵が皆無に等しいからである。
報告書の内容全てに目を通してコメントすることは到底不可能だが、報道で大きく取り上げられている近現代史関連のいくつかの論点を見れば、日中共同の歴史研究の意義が認めがたいことは明白である。具体的には、南京事件、満州事変、日中戦争などが挙げられよう。南京事件では、日本側は「20万人を上限として様々な推計がある」としたのに対して、中国側は「30万人余り」との従来通りの中国としての公式見解を繰り返した。満州事変に関しては、日本側は「関東軍の謀略であったが、政府は追認せざるを得なかった」という認識を示したが、中国側は「侵略である」と断じた。そして、日中戦争については、日本側は「その発端となった盧溝橋事件は偶発的だったが、日中戦争の原因の大半は日本側にある」と認め、中国側は「日本による全面的な侵略戦争である」とした。
これらの注目論点も含めて、結果として、報告書は両論併記という形になったが、議論の全体の流れについては、「中国側が『日本による計画的な侵略ありき』だったのに対して、日本側は個別の事実から侵略性を判断しようというアプローチをとった」という趣旨のことを座長の北岡氏は言っている。また、1945年以降の部分について発表しないよう中国側が強く要請し、その通りになったことも示唆的である。チベット侵略や文化大革命や天安門事件などの中国共産党支配の恥部を隠したかったということであろう。さらに言えば、中国共産党による政権掌握の正統性自体にすら疑問符が付きかねないことをおそれたのではないかと思う。(つづく)
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