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2010-02-16 00:00
マイマイガ問題と日本外交への不安
水口 章
敬愛大学国際学部准教授
深海や地中からも新種が発見されており、どれほどの数の種が存在するのかはまだ定かではない生物界であるが、現在分かっている生物のおよそ70%は昆虫であるという。その昆虫が、国際問題の主役になることが時にある。最近注目されているのは、マイマイガ(Lymantria didpar)である。このガは、一定の周期(約10年)で大量発生し、その幼虫は旺盛な食欲で植物を食い尽くすことで知られている。2009年5月には岩手県で大量発生している。
国際問題となっている背景には、このガの天敵である寄生バチやウィルスが北米大陸にいないことがある。船荷にまぎれてマイマイガが北米大陸に移入され、大量発生すると、人的駆除だけでは対処しきれない状況になる。このため、米国とカナダは、マイマイガが大量発生している地域に近い港からの積荷を運ぶ船舶に対し、入港条件として害虫駆除証明を要求している。この証明には、1隻につき約10万円のコストがかかる。
日本の港では、これまで神戸など数港がその対象とされていた。しかし、2月に入り米国とカナダは、その対象を日本全国の港に拡大した。日本各地でマイマイガが大量発生しているのだろうか。どうも米国とカナダのこの処置には、日本製品に対するソフトな輸入障壁という面があるように思う。日本で民主党政権が誕生して以降、トヨタ問題に関する米メディアでの過熱報道や米政府の対応ぶりなど、日米間に隙間風が吹いている。また、米国は、対中関係においても、ステイクホルダーという見方から対立的対応へと立ち位置を動かしているように見える。
米政府の政策効果が思うように上がっていない失業問題や景気回復の遅れから、米国内産業の立ち直りを第一義とする愛国主義が広がっていることが懸念される。マイマイガに関する今回の対日処置が、純粋に防虫対策であることを願う。それにしても、日本の民主党政権の対米政策は、幹事長の訪米しかないのだろうか。マイマイガ問題は、まだまだ先行き不安から脱することができない日本外交を象徴しているように思えてならない。
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