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2010-03-27 00:00
(連載)日本は、米中の狭間でぐらぐらするな(1)
河東哲夫
自由業
3月26日付け日経が書いている。「2月下旬、キャスリーン・ヒックス米国防副次官とマイケル・シファー国防次官補が来日し、2月1日に発表されたばかりの『4年ごとの国防戦略見直し』(QDR)を日本政府に詳しく説明した。――冷戦中は欧州での米ソ対決を想定し、大規模な空と陸の共同作戦を準備した。今度はそれを空と海でやる。重点は西太平洋だ――と。日本側の関係者の表情はこわばった。露骨に名指しこそしないものの、中国軍を念頭に置いていることは、明白だったからだ」という趣旨を。
これが実際にどの程度のものかは、米国の関係者からよく話を聞いてみないとわからない。経済面で共生を深めている米中が、安保面でどこまで対立できるのか? そこもよくわからない。ちょうど3月15日付けの PacNet誌(ハワイのシンクタンクが出している週刊誌だ) は、「2010年のQDR(4年ごとの国防政策の見直し)とアジア」と題し、退役海軍大将マイケル・マクデヴィットの関連寄稿を掲載しているので、見てみよう。本論評は、「2月1日にゲーツ国防長官が発表した最新QDRは、対テロばかりでなく、世界・アジアでのあらゆるケースに備えている」として、アジアの同盟・友好諸国に安心するよう呼び掛けることに主眼を置いている。
但し、最近中国軍部関係者が発言している「area-denial」(中国から一定の範囲の海域[公海]では米海軍の活動を許さない、とするもの )についてかなりのスペースを割き、「米国が中国の軍拡を恐れてアジアから撤退する、ということはない。中国はanti-access、あるいは area-denialを唱えて、東アジアから米海軍を押しだそうとしているが、QDRはこれに対して正面から答え、米国は同盟・友好諸国とも共同しつつ中国海軍に対する現在の優位を堅持していく」と述べている。
そして更に、「東アジアにおいて米国と中国は力比べ(capabilities competition)の時代に入ったのだ。中国海軍に対する優位を堅持するため、QDRは米海軍と空軍の連携を強化(joint air-sea battle concept)することを主唱している。これはあらゆる方面――空、海、陸、宇宙、サイバー空間――における能力を統合することを意味する」と述べた上で、「米国はアジアから撤退するつもりはなく、同地域の安定を維持する役割を果たすのに必要な軍事力を、これからも維持していくつもりである」と締めくくっている。中国軍部関係者が最近、area-denialの思想を打ち出していることは事実だが、中国海軍が広域の制海権を恒常的に維持できる実力を有するにはあと15年はかかるだろう。現在できることは、潜水艦の個別行動による米艦隊威嚇、あるいは対艦巡航ミサイルによる米空母艦隊への脅威程度であろうが、周辺海域での制空権を有していないかぎり、米艦隊の位置特定等ができず、限界がある。(つづく)
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