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2010-04-11 00:00
(連載)ギリシャ危機で露呈したユーロの弱点(1)
中岡 望
ジャーナリスト、国際基督教大非常勤講師
ギリシャの財政危機に端を発したユーロ危機も当面の山は越えたようです。ギリシャ政府は自力で50億ユーロの国債を発行し、財政赤字削減策を打ち出しました。厳しい緊縮策は国内で強い反発を招いていますが、金融市場や為替市場は落着きを取り戻し、ユーロ相場も回復に向かっています。この数ヶ月のユーロ相場の動きを見てみると、対ドルでは2月25日に1ユーロ=1.3489ドルの安値を付け、緩やかに上昇に転じています。3月17日の相場は1ユーロ=1.3756ドルです。対円相場でみると、2月25日に1ユーロ=120円66銭の安値を付けた後、反転しています。3月17日の相場は、1ユーロ=124円43銭です。ちなみに過去120日のユーロの対ドル相場の最高値は、昨年の12月3日の1ユーロ=1.512ドルでした。対円相場では、10月26日の1ユーロ=138円09銭でした。
このままユーロ相場の上昇が続くかどうか、まだ判断できません。当面の危機を乗り切ったとは言え、ギリシャ政府の国債は4月に120億ユーロ、5月に80億ユーロの満期が到来します。こうした返済資金の手当てはまだ付いていません。多くの欧州の銀行は、巨額のギリシャ国債を保有しています。たとえば、ドイツのコメルツバンクが保有するギリシャ国債は320億ユーロに達しています。欧州の銀行が巨額のギリシャ国債を保有している理由は、極めて簡単です。民間銀行は現在、欧州中央銀行(ECB)から金利1%で資金を借りることができます。他方、ギリシャ国債の利回りは5%程度ですから、ECBから借りた資金でギリシャ国債を買えば、大きな利益を上げることができるからです。
またヘッジファンドなども、巨額のギリシャ国債を持っています。そうした投資家は、将来のリスクに備えてクレジット・デフォルト・スワップを組んでいます。その額は850億ドルに達していると推定されます。今、ギリシャはアメリカのサブプライム・ローン危機と同じような状況に置かれているのです。そうした危機を本当に乗り切ることができるのか。もしギリシャ国債がディフォルトに陥れば、新しい金融危機が発生する可能性もあります。その意味で、ギリシャ危機はまだ完全に終わったとは言えない状況です。
そうした状況の中で「ユーロ」を共通通貨とする欧州通貨同盟が崩壊するのではないかという議論も出てきています。現在の共通通貨ユーロが導入されたのは1999年1月1日です。最初はEU(欧州連合)に加入する11カ国(ドイツ、フランス、イタリア、オーストリア、アイルランド、ベルギー、ルクセンブルク、オランダ、ポルトガル、スペイン、フィンランド)で発足しましたが、その後、ギリシャ、スロベニア、キプロス、マルタ、スロバキアが加わり、現在は16カ国になっています。ちなみにイギリスは通貨同盟に加わっておらず、今でもポンドを使っています。この16カ国を「ユーロ・ゾーン」と呼んでいます。ユーロの導入と共に、欧州中央銀行(ECB)が設立され、共通の金融政策が行われるようになりました。すなわち、金利はECBが決定し、それはユーロ・ゾーンの国で適用されます。(つづく)
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