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2010-04-13 00:00
(連載)「核なき世界」と日本の対中外交(3)
角田 勝彦
団体役員
この懸念に対し オバマは4月8日プラハで、中・東欧11カ国の首脳らを招いた夕食会を開き、米国との関係希薄化への懸念をぬぐい去ろうとした。また北朝鮮を核攻撃の対象となり得るとし、かつ従来の抑止力を維持するため、ミサイル防衛(MD)強化や通常戦力改善に取り組むとして、日本などに配慮した。これに対し、岡田外相は7日、記者団に「日本政府の従来の考えと同じだ」と述べ、北朝鮮への抑止力を維持しつつ、核軍縮も進める姿勢を評価している。
米国内でも新STARTとCTBTの批准には上院で3分の2の賛成が必要で、共和党の協力が不可欠である。即ち、核抑止力堅持を主張する保守派の意向を尊重せざるをえない。理想主義的なNGOなどは、NPRで「核先制不使用」を宣言することで、核兵器の使用を極めて限られた場合に限定し、その役割を大幅に後退させることを求めていたし、日豪政府が主導した「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会」は昨年、核兵器の目的を核攻撃の抑止に「唯一」限定することを、NPRに盛り込むよう提言していたが、核戦略の柔軟性がなくなると恐れる軍と保守派の反発を考慮し、これらは見送られたのである。
またNPRは、生物・化学兵器の攻撃には、核兵器では反撃しないとしているが、将来的に生物兵器が核兵器並みの威力を持った場合、解釈を変更し、核攻撃する可能性を示唆しており、すべての大量破壊兵器に核攻撃の選択肢を残すべきだとする保守派への配慮が見える。要するに、今回のNPRは 「核兵器なき世界」を求めるリベラル派と核抑止力堅持を主張する保守派のバランスに苦心したものだった。
さてNPRは、核テロ対策や核不拡散を米核戦略の最優先課題に掲げている。つまり、核保有大国間の戦争の可能性は二の次としている、しかし、中国には特別の配慮が払われている。即ち、(イランや北朝鮮など)の核開発国の脅威から米国や同盟国を守る上で「ロシアや中国と、安定した戦略的な関係を維持し続けなければならない」としたうえで、中国自体の核については「核開発のペースや戦略など計画全般が透明性に欠け、中国の将来的な戦略に疑念を抱かせる」と指摘するにとどめている。(つづく)
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