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2010-04-14 00:00
(連載)イギリス総選挙と外交政策の行方(2)
河村 洋
親米NGO代表
他方で、ヘイグ氏はアメリカとの関係をより重視し「グアンタナモでの捕虜の待遇に関する問題などでアメリカが誤った行動に出たなら、イギリスが政策訂正の助言を行なうべきだ」と主張している。またEUにも「ボスニアのような危機管理で共同軍事行動の能力を向上させるべきだ」と述べた。
上記のような違いはあるものの、現職と影の両外相とも「イギリスはNATO、英連邦、国連安全保障理事会、EUを通じて国際政治の交流のハブという特別な役割を果たせる」との見解で一致している。私は、この役割が大英帝国の歴史とその多文化主義に深く根ざしていると見ている。イギリスの植民地になった歴史はないものの、日本人にとってイギリスはヨーロッパでは「最も近づきやすい」国である。東京でのLSEフォーラムでも、アダム・スタインハウス国立行政研修学院ヨーロッパ研究部長は、EUの官僚機構とブリュッセルでのロビー活動に成功する方法を語り、EUと自国の国家主権で揺れるイギリス外交について語った。
困惑すべきことに、EUにはヨーロッパ全体の政策を作成できるだけの充分な人員も資金もない。スタインハウス氏は「ブリュッセルの意思決定は、局長クラスから閣僚レベルへのボトム・アップでなされている。また、EU諸機関の縦割りもあって、最終的な責任の所在が誰にあるのかわかりにくくなっている。例えば、EUにはヨーロッパ評議会、閣僚評議会、ヨーロッパ委員会、ヨーロッパ議会のそれぞれにその議長がおり、かれらは4人のいわば大統領の役を果たしている。また、ブリュッセル官僚機構の予算は各加盟国のそれよりも少ない」と述べた。
これらの点を考慮すれば、イギリスにおいて、保守党がEUを通じたアプローチよりも二国間外交を好ましく思う理由が理解できる。スタインハウス氏は「イギリスにとって、インドやパキスタンのような国々との関係は、多国間関係よりも二国間関係の方が強い」と指摘する。確かにイギリスは、アフガン戦争や南アジアの安全保障に関しては、EUの窓口を通さずに、直接二国間外交で両国と話し合っている。(つづく)
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