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2010-04-16 00:00
鳩山総理の「言葉の軽さ」は国を危うくする
宮崎 厚
ベンチャー企業顧問
私はビジネスの世界で多くの交渉ごとに携わった経験がありますが、ビジネスは利害関係の絡んだことが多く、Win-Win の関係に持ってこれれば、大抵の問題は解決可能です。しかし、国際政治という外交の世界での交渉はさぞかし難しいだろうと想像していました。なぜならそこは言葉だけしか手段がないからです。ワシントンで開かれた核安全保障サミットにおける鳩山総理の対応については、マスコミ等でも散々叩かれていますが、もしかして総理の言葉が軽くて、不適切なのではないか、と危惧しています。少し前、マスコミから発言のブレを突っつかれた時、「ゆらぎこそこそ、全ての世界の本質」と量子物理学の世界の言葉を使われたときに、鳩山総理は確か学生時代に物理学を専攻されたから、そのことばを使われたのではないかと危惧しました。
確かに「ゆらぎ」とはハイゼンベルクの不確定性原理と共に、量子物理学の本質的言葉で、プランク定数の世界における空間の真空のゆらぎなどを物質世界の本質とする命題です。しかし、これを政治の世界でいきなり持ち出すのはいかがなものでしょうか。こういう「言葉の軽さ」が、今回のサミットだけでなく、鳩山総理の内外マスコミにおける低評価に繋がっていると危惧します。ジョージ・ソロスも著書の中で、グローバル経済の将来をシニカルに批評する時にハイゼンベルグの不確定性原理という言葉を用いて、格好をつけています。現実の社会関係の中でこのような物理学用語を高級そうに用いて、「世の中の本質はそのようなものだ」などと言っても、説得力は皆無です。むしろ、その人がおごった人だと受け止められるでしょう。
現実の人間社会では、特に政治や外交の世界では、言葉によって人々の心を動かす以外の方法がありません。ビジネスよりも難しい世界です。もっと言えば、頭の回転、知識の広さ、相手に対する配慮の深さ、巧みな言い回し、それら言ってみれば知能指数の高さを、相手に察知させて、圧倒しなければ、優位な交渉結果は出てこないのではないでしょうか。それが外交交渉の難しさだと思います。オバマ大統領にしろ、胡錦涛主席にしろ、あるいは今回出てこなかったプーチン首相にしろ、皆そうそうたる面々です。かれらと対峙して、彼らを言葉で圧倒するのは、本当に大変だと思います。鳩山総理、政治や外交では言葉を大切にしてください。
外交交渉は、言葉で相手の心に働きかけ、相手の心を動かさなければ始まりません。単なるビジネスの損得交渉とは、訳が違います。一国の安全保障にかかわる問題です。これこそが、本来の政府の役割であり仕事です。国の経済活動は、国民一人ひとりが支えており、必ずしも政府だけに責任があるとは言えません。しかし、安全保障や国際政治については、民間人はそれぞれに自己の生活にまい進しており、そこまでは手が回りません。だからこそ、政府の役割があり、総理の使命があるのです。鳩山総理、しっかりとしてください。
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