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2010-04-22 00:00
ゴールドマン・サックス社訴追にあたり、思う
宮崎 厚
ベンチャー企業顧問
私はかねがね、グローバル化した自由市場について、財やサービスなどの実物経済の規制を緩和し、人の移動と情報の自由化を進める必要があると思ってきました。しかし、金融については、グローバル市場主義を適用することに疑問を持ってきました。なぜなら、金融とは、根本的に付加価値を生まないからです。不動産もこれに似ています。安い時に買って、高くなってから売るだけでは、何の付加価値も生じません。ゴールドマンサックスは30年ほど前は、金儲けの好きな連中のパートナーシップの小さな投資会社でした。それが今のような巨大会社となり、莫大な利益を上げ、管理通貨制度の下で多重リース取引のような信用創造を行い、金融経済が実物経済の何十倍もの規模を持ったことは異常です。彼らは本質的にギャンブルに似たシステムを作って利益を得ていると疑っていました。現実のギャンブルも、それを楽しむ人もいて悪いことではありません。お金がお金を生むシステムだからすぐに悪いとも言えません。
しかし、一昔前には消費者や需要者の利益を損なう恐れがあるとして、独占禁止法が市場の番人とされた時期もありました。市場を独占して倒産させられなくなったような巨大企業は、悪とみなして事前に分割したわけです。これと同じように、金融の巨大化は、実物経済に悪影響を及ぼす恐れがあるとして、その行動を規制する必要があると感じます。実物経済においては、限られた資源を最適配分し、需給調整によって適正価格を決め、その安定を維持する自由競争市場に勝る経済システムはないと思います。しかし、管理通貨制度のもとでは管理通貨は各国政府が無制限に発行したり、その時の都合でどんどん財政支出したりして、限られた資源には該当しません。日本の銀行や証券会社もそうですが、金融機関とは世の中から資本を集め莫大な利益を上げることが使命ではなく、慎重な経営こそがその使命です。利益は少なくとも、継続的、安定的に事業を経営し、実物経済の発展に寄与することが使命だと思います。
したがって、かつてから言われたBIS規制にも疑問を持っていました。金融機関は資本金を大きくすれば安全性が高いのではなく、行動基準を安定と継続指向に切り替えることの方が重要だと思います。付加価値の最大化を目指す一般事業会社にとっては、利潤最大化に大きな意義がありますが、金融機関が投機的、ギャンブル的行動でいくら利益を上げても、社会全体の富の増大にはなりまあせん。せいぜい自分たちが巨額報酬で山分けするだけでしょう。昨年来リーマンショックと言われ、肥大化したマネー市場の崩壊で、世界中の実物経済が打撃を受けて、先進各国が財政措置に追われ、世界的に政府の財政赤字のリスクが高まっています。このままではいつか日本を含め世界的に増税となり、経済の根本的停滞と社会不安を招く恐れがあります。第一次、第二次世界大戦当時のように、金融資本主義による経済のひずみが国際平和を乱すことにならないように、金融機関の増殖と投機資金の巨大化は防ぐべきと考えます。
90年代の金融破たんとその後の「失われた10年」を経験し、世界に類のない巨大な財政赤字を抱えてしまっている日本こそ、世界の平和と安定、進歩と発展を目指した経済システム構築のための打開策を考えるべきであり、そうすれば世界は付いて来ると思います。オバマ政権ですら気づいていることに、どうして日本は気づかないのでしょうか。ゴールドマン・サックス社を犯罪者とは呼びませんが、社会経済の健全な発展に対して不適切な行動となっていること、今後は規制の対象になることを、明らかにしておくべきと考えます。先進国サミットなどで日本外交は、このような世界経済の管理体制に関してはっきりと指導性を発揮してほしいものです。
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